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第20話
俺たちは3年になった。
もうすぐ高校最後の体育祭がやって来る。
結局、あおたんはみんなに乞われ、応援団に参加することになったようだ。
応援団は2年と1年で構成されるから、今回、俺は見るだけだ。
実行委員のやつに聞いたところでは、俺とあおたんのいる白組は男子のチアになり、スポーツチアをメインに、一部女装チームが華を添える構成になったらしい。そして、センターでアクロバティックな技を見せるのはあおたんのようだ。
体育祭が終われば、3年は実質受験に向けてまっしぐらという感じだ。
せっかくあおたんが同じ高校に入ってくれたのに、少し疎遠になったからか、一緒に高校生活を楽しんだというには物足りないな。
かつては「龍ちゃんのいる空手部に入る」などと言ってくれて、俺は楽しみに待っていたのに、体験入部までしたのにあおたんは空手部には入らなかった。
「うちは進学校の割にかなり強くて、やりがいがあると思うぞ?」
と誘ってみたが、あおたんは俯いてごにょごにょとお茶を濁し、入部しない理由は答えなかった。
毎日あおたんと部活で汗を流し、一緒に試合に出て・・・と密かに妄想、いや夢見ていた俺は正直がっかりしたが、そんなことはおくびにも出さず
「蒼が、ほかにやりたいことがあるなら仕方ないよな」
と笑って言った。
思えばこの頃からあおたんが少しずつ遠くなっていった気がする。
結局、あおたんはあまり熱心に活動していない体操部に入ったのだが、たまにふらりとうちの道場に現れては稽古をしていくと親父が言っていたので、空手自体が嫌いになったわけではなさそうだった。
*****
「おい、モモンガちゃんがいるぞ」
友達の一人がわき腹をつついた。
今日は、早弁をしてしまったから、昼を食堂で食べようと友人3人と連れ立って食堂へ訪れたところだ。
びよーんと飛んできて、木に飛び移るように俺に飛びかかるあおたんのことを、そう呼ぶやつらがいる。
あおたんは奥のテーブルでクラスメートらしい男子4人でワイワイ楽しそうにカレーを食べていた。
俺たちは入口近くのテーブルが空いたのでそこに座り、カツ丼を食べる。さっきのやつがもぐもぐしながら話し出す。
「今年の白組のチア、面白いらしいぞ。放課後の練習見てたやつらが言ってた」
「モモンガちゃん、大活躍らしいな。伊達にいつも八神に飛び乗ってない」
「うちの体操部がもうちょっとまともな顧問でもついてりゃ、もっと部活でも活躍できただろうに、弱小クラブだからなあ」
普段、俺とつるんでいるやつらだからか、あおたんのこともすっかり身内みたいな目線になっているのが可笑しい。
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