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第21話

向こうから食べ終わったらしいあおたんの一団がこちらへ向かってくるのを見て、ふと思いついた。 「あ、龍ちゃーん!龍ちゃんも早弁?」 と、声をかけきたあおたんに 「蒼、ちょっといいか?」 と、食堂の外を指さす。きょとんとしたあおたんだったが、友達には先に戻っといてーと言った。 「蒼、ちょっと相談なんだが・・・棒倒し、お前は防御と攻撃とどっちだ?」 「攻撃希望!」 あおたんがシャキーン!と手をあげる。 棒倒しはケガが多いので、1年生は参加できず、2,3年男子の合同競技だ。 「だろうな。3年で作戦を考えていたんだが、参考にする。白は防御に重点を置いて、攻撃は一点突破体制をとる予定なんだが、いまちょっと思いついたことがあって・・・」 俺は作戦を話す。聞き終わったあおたんは目をキラキラさせて「やる!」と言った。 「お前はマークされているだろうから動きにくいだろうし、囲まれて俺を見つけられない可能性もたか・・」 「何言ってんの、俺が龍ちゃんを見つけられないわけがないだろ?大丈夫!」 にまっと笑うあおたんに、俺も嬉しくなって笑い返した。 ****** 体育祭当日。 下馬評通り、あおたんは応援合戦のチアで、華麗な技を連発し、赤組に大差をつけて得票数を稼いだ。 あおたんだけでなく、一緒にアクロバティックな動きをするメンバーもきれいに動きが揃っていたし、あおたんを放り投げたり受け止めたりする他のメンバーもかなり技術が必要に見え、相当練習を積んだと思われた。 きっと、あおたんがいつものように盛り上げたんじゃないだろうか。子供のころから、あおたんが「ねえねえ、やろうよー!」というと不思議と周りはその明るい雰囲気に染まって「やろうやろう!」と楽しみ始めるのだ。 終盤の目玉競技の一つ、棒倒しが始まった。 敵の棒を完全に倒すか、棒の先端に取り付けられている旗を取った方が勝ちだ。 3回戦まであり、1回戦は2年男子、2回戦が3年男子、3回戦が2,3年合同で3回戦の配点は1,2回戦の3倍ある。 つまり、3回戦を抑えなければ1~2回戦を取っていても逆転されるわけだから、当然3回戦にかける男たちの執念はすごい。 定石では体重がある奴が4人、棒の根元に座って四方向からしっかり支える土台になり、周りを防御専門のやつらがスクラムを組む。 さらにこちらに向かってくる敵を迎撃する者、スクラムによじ登る敵を引きずり落とす者と守備だけでもこれだけの役割がある。 攻撃側は切り込み部隊、棒の先端に登るのをめざす特攻部隊、特攻部隊を援護する部隊。 敵は、ガタイがいい俺は土台、身軽なあおたんは特攻部隊と読んでいるはずだった。 実際1,2回戦では俺たちはその役割で動いた。

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