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第22話
3回戦開始の笛が鳴った。
俺は5人目の土台として根元に座っている。パッと見、俺の姿は見えないから敵も読み通りと思っているはずだ。
ただ、特攻部隊として飛び込んでくるはずのあおたんが守備の迎撃部隊にいることには戸惑っているはずだ。
きっと、あおたん専門にマーク要員もつけていたに違いない。
うおーという声と共に敵が攻めてきて、男たちの体がぶつかり合う。
やがて、タイミングをはかっていた味方の3年の司令塔が
「牛若丸作戦、始動!」
と叫んだ。
俺は両隣に目配せすると棒から手を離し、男たちの足元をかいくぐりスクラムの外に出た。
俺が敵陣営に走り出すと、あらかじめ決めていた援護の4人が抜け出て俺の行く先を阻むやつを排除にかかる。
俺はその間をくぐり突進する。
「八神を止めろ!!」
敵陣営の男たちが叫ぶ。
赤組の守備部隊もがっちり棒の周りを固めているが、俺はそのスクラムより頭一つデカい。敵の頭上を中心に向かって必死で手を伸ばし、何とか棒に片手が届いた。無数の手が引きはがそうと伸びてくるが、味方の援護チームが応戦している。
やっとしっかり手がかかったところで「蒼!来い!」と叫んだ。
ほぼ同時に「龍ちゃん!行くよ!」というあおたんの声。
あおたんは、敵スクラムの手前で馬跳びの馬の格好で待っていた味方にまず飛び乗り、そこから俺の背中に飛んだ。
そして目にも止まらぬ速さで俺の肩に足を掛け、棒に飛び移ったかと思うと、
あっという間に5mの棒をするすると登っていき、敵の旗を抜き取って高々と掲げた。
グランドは、全学年女子の「キャー、あおくーん!かっこいいー!」という黄色い悲鳴と、
俺たちのコンビネーションプレーに感嘆する1年の声と、作戦がうまくいって雄たけびを上げる2,3年白組男子の声に包まれた。
結局、総合得点で白組が勝ち、白組代表に担ぎ上げられていた俺が優勝旗を受け取った。
2年のMVP賞を取ったあおたんは、受賞者が立ち並ぶ位置から、俺が旗を掲げる様子を嬉しそうに見ていた。
目が合うとにかっと笑ってこちらにVサインを向けた。
ああ、この高校生活の中であおたんと一緒に青春した日のことを、俺はきっとずっと忘れないだろうと、あおたんのキラキラした笑顔を見ながらそう思った。
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