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第25話

高校で唯一、龍ちゃんとの大きな接点を持てたのは2回目の体育祭。 龍ちゃんが同じ白組の代表になったと聞いて、ちょっとやる気がでた。 俺がガンガン点を稼いで、龍ちゃんに優勝旗を持たせてあげよう。 まったく自己満足以外の何物でもないけど、たった一度しかないチャンスに龍ちゃんがあの堂々たる体躯で優勝旗を受け取って掲げる雄姿を想像してちょっとワクワクした。 そんな時、龍ちゃんから「俺と蒼で棒倒しを制しよう」と作戦を相談され、舞い上がった。作戦の相棒に俺を選んでくれたのが嬉しくて仕方が無かった。 作戦の詳細を詰めた3年生のうちの一人が最初『モモンガ作戦』と呼んでいたけど、それじゃ丸わかりだろうと『牛若丸作戦』に変わったと聞いた。 牛若丸?なんだっけ? 確か歴史の授業で源義経に絡んで出てきたような気がするが、 幼少期を海外で暮らした俺はそういう誰でも知っているような事が抜けていたりする。 学校の帰りに子供の絵本コーナーで牛若丸を立ち読みしたら、牛若丸が身軽な奴だということが分かり、なるほどと思った。 そして、ばかでかい武蔵坊弁慶が龍ちゃんの風貌に重なって笑えた。 これも作戦名を考えるときに含まれていたのかな? だけど、龍ちゃんは俺の家来なんかじゃない。 勧進帳のあたりの頭の良さと肝の据わりっぷりは、イメージにぴったりだけど、龍ちゃんは俺なんかよりずーっとずーっと先を行ってしまうなんだか遠くなりつつある存在で・・・何冊か子供向けの本をめくっていて、気が付いた。 牛若丸は大人になって義経と名乗るようになる。 義経と弁慶に待っていたのは悲劇だった。 義経を逃がすために弁慶は死に、結局逃れた義経も自害する。 縁起でもない作戦名つけんなよ、と俺は一人で不機嫌になった。 しかし、結果は予想以上にいいものだった。 俺と龍ちゃんのコンビネーションはバッチリで、さすがモモンガと大木コンビと3年生たちから褒められ、目論見通り龍ちゃんには優勝旗を持たせることが出来た。 大きく優勝旗を掲げる龍ちゃんはやっぱり男らしくてかっこよくて、「ああ、やっぱり俺は龍ちゃんが好きだ」と改めて思った。 MVPを取った俺に龍ちゃんは 「頑張ったな。白組の勝利に大貢献したな」 と、頭にポンを久しぶりにやってくれた。 達成感もあったし、やっぱりすごく嬉しかった。

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