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第29話
俺は迷いに迷って、ものすごく久しぶりに龍ちゃんにラインを送った。
『龍ちゃん、この間は八つ当たりで酷いことを言ってごめんなさい。いつ、こっちに帰って来る?』
片時もスマホを離さずチェックする。
30分ほどして既読が付いた。でも返信はなかなか来ない。
スルーされてる?こんなことは初めてだ。やっぱり怒っているのだろうか。
結局、返事が来たのは3時間も経ってからだった。
『気にしなくていい。夏休み中こっちにいる』
え、1か月半も帰ってこないの?
何の説明もないそっけない返事に心が萎む。
気にしなくていいとあったが、本当は嫌われちゃったんじゃないかと不安で仕方がない。
ずっと辛い恋を抱えて耐えているのだとしたら、ころころと彼女を替えていい加減なことをしている俺のことはずっと呆れて見ていたかもしれない。いや、軽蔑すらしていたかもしれない。
俺の方が龍ちゃんのことを何もわかってなかったんじゃないか。
大好きだったはずなのに。
元々は龍ちゃんと翠の関係を誤解して、苦しさから逃げるために女の子たちと付き合い始めたことを思い出す。
俺って、とことん最低だ。
自己嫌悪の波が襲い掛かって来る。
龍ちゃんの好きな人って翠じゃなかったら誰なんだろう。
翠だから手出しができないと思っていたのに。
だが今は、どこの誰を龍ちゃんが好きなのか全然わからないことが、俺を激しく不安にさせる。龍ちゃんの恋する相手は・・・そこで俺は、自分が龍ちゃんの好きな女のタイプすら知らないことにショックを受けた。
辛い恋っていうことは、両想いになれていないってことでいいのか?
告白したけど振られた?
女の方に彼氏がいる?
もしくは旦那持ち?
かなわなくてもずっと想い続けているってこと?
龍ちゃんに想われ続けている女が羨ましかった。
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