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第35話 俺のサムライ 3(遠く離れて)
進学校である俺の高校は3年の2学期からは受験一色という感じになる。
部活も引退しているし、補習やら予備校やら模試やらで、上級生たちの顔つきも変わってきている。
龍ちゃんはますます遠くなった。
会えば普通に話をしてくれるが、「もう飛びついて来るな」と言われたのが効いていて、なんとなくもう前のように甘えたりできなくなってしまった。
龍ちゃんが足りないよ・・・ずっとそんな気持ちだったけど、どうすることもできずただ遠くから眺めているうちに、3年生はあっという間に卒業し、龍ちゃんは翠と共に東京の大学に行ってしまった。
卒業式の日に直接お祝いを言いたくてタイミングを計っていたが、人望があり皆の憧れの的でもあった龍ちゃんは同級生にも後輩たちにも大人気で、なかなか順番が回ってこなかった。
結局やっと話す機会が回ってきたときには龍ちゃんは無残な姿になっていた。
制服のブレザーのボタンは袖口のものまで全て無くなり、ネクタイやワイシャツのボタンすら無くなっている。
話したくてずっと待っていたくせに、いざ前に立つと俺は何も言えなかった。
龍ちゃんがいなくなると寂しいとすら口に出せなかった。
そして、龍ちゃんはやっぱりもう頭に手を乗せてくれることも無く、「蒼も頑張れよ」と他の誰よりも短い言葉をくれただけだった。
俺はうなだれて家に帰った。
ベッドに寝ころび龍ちゃんの事ばかり考えた。
小学生の時からずっと龍ちゃんを追いかけてきたはずだった。
強くて、優しくて、でも決して驕ることのない俺のサムライ。
どうしてこんな風になっちゃったんだろう。
鼻の奥がツンとして両の目じりから涙がこぼれた。
もう会えないのかな。そう思ったら心にぽっかり穴があいたようだった。
******
新学期が始まっても、心は晴れなかった。
同級生の男たちはかわいい新入生が入ってきたとか騒いでいたけど、俺はもう居るはずのない大きな姿を無意識に探してしまう。
もうずっとフリーの俺にモーションを掛けてくる女子は相変わらずいたけど、とてもそんな気にはならなかった。
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