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第38話

アメリカでの生活にも再び馴染みはじめ、友人もたくさんできた。 それなりに楽しい生活を送っている俺だったが、恋愛ごとになるとからっきしダメだった。 心の中にはずっと龍ちゃんがいる。だけど、そんなことは誰も知らないわけで。 こっちは男も女も積極的にアピールしてくる。 女はやっぱり興味が持てないから、即ごめんなさい。 男は・・・やっぱり絶対数が少ない。マイノリティーなんだから仕方がない。そんな中で「俺と付き合わない?」と言われるのは、少し救われた気がする。 「ごめんね、好きな人がいるんだ」 そう答えると、何割かは「誰だ」とか「どんな奴だ」とか聞いてくる。 俺が、男だからという理由で断らなかったのを聞くと、彼らも絶対数が少ないわけだから、ストレートの男たちより一生懸命に口説く。 ある時、口のうまい奴に誘導されて、日本にいる幼馴染がずっと好きだとぽろっと言ってしまった。 相手は怪訝な顔をして言った。 「その話と、君が僕の誘いを断ることに何の関係が?もう会うこともない奴だろ?  僕も子供の頃、近所のお兄さんが大好きだったけど、それと同じ話だよね?」 彼のそのセリフは俺に少なからずショックを与えた。 ガキの頃から龍ちゃんが大好きだった俺が、恋愛対象として龍ちゃんを見ていると自覚したのが中学3年の時。だがこの時、俺は自分がゲイだとかそんなことあんまり考えていなかった。特に女の子が苦手でもなかったからかもしれない。 翠の彼氏だと思い込み、伝えられない気持ちを持て余しながらもずっと好きだったのは龍ちゃん一人。 だけど、ずっと龍ちゃんに固執し続けたのは、もしかしたら俺の好みの男があまりにも身近すぎたから? 『初恋の相手は幼稚園の先生』みたいなもんだったのか? 日本の高校にいる間に女の子たちと付き合っても全く心が満たされなかったのは、相手が女の子だったからじゃないのか? 相手が男だったら、どうだったんだろう? 龍ちゃんへの恋心は本物だったと思うけど、もし今、俺の前に俺の好みの男が現れたら、俺は新しい恋に踏み出せるのかな。そうすれば、ずっと胸の奥にある痛みから解放される? 男相手には全く未体験の俺は、わからないままに悩み続けた。

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