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第40話
好きな相手とでないと満たされないのは男でも同じだとわかったが、好きな人に手が届かない場合はどうしたらいいのか。
時々、無性に孤独を感じ人肌が恋しくなる。
そんな時、俺は自分の欲求を満たすために、一度限りの相手を探した。
その方が自分勝手な妄想をするのが後ろめたくなくてよかったのだ。
今、俺を抱いているのは龍ちゃんだと自分に思い込ませる。
今、俺の背中にキスマークを付けているのは、龍ちゃんの唇だ。
俺を欲しがって後ろから突き上げているのは、龍ちゃんの熱塊。
俺のものを握って擦りあげているのは、龍ちゃんの手……
違う。
龍ちゃんの手は空手のせいでもっと関節がごつごつしていて少し硬くて……このあたりでいつも妄想がうまくいかなくなる。そして虚しさが胸に広がる。
本気で俺を口説いてくれた男達もいて、何人か付き合ったこともある。
皆それぞれに一生懸命に俺を愛そうとしてくれるし、俺も返そうと思うのだが、うまくいかない。何かが違う。
俺がいけないのだ。
知らない間にいつも心の中で龍ちゃんと比べてしまうから。
自分にいかに魅力があるか、自分と付き合えばどんなメリットがあるかと雄弁に語る相手に引いてしまう。
甘ったるい愛の言葉を耳元で囁き続ける相手に、ただ一言でいいのにと思ってしまう。
セックスの最中に俺の名前を呼ぶときに、いちいち龍ちゃんとのイントネーションの違いに気づいてしまう。
相手には非はないのに、勝手に初恋の相手と比べて、俺は酷い男だ。
もし、これが龍ちゃんだったら、きっと……
バカだな、俺は。
もう俺と龍ちゃんの人生が交わることなんてないのに。
日本から遠く離れ、働く業界も違う。
こっちはゲイで、龍ちゃんは将来きっといい夫になり父親になるであろう
ストレート。
きっと二度と会うこともないのだ、と改めて認識してその現実に絶望した。
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