友達になったミゲルからは時々連絡が来る。 ミゲルも勿論、俺がずっと龍ちゃんを忘れられないでいることを知っているし、俺の気持も理解してくれている。 だが、相手はストレートな上に遠く離れた日本にいてもう何年も会っておらず、俺の一方的な片思いであることを知っているだけに、心配もしている。 「アオ、まだ新しく気になる人できない？」 「残念ながら」 「アオ、このままじゃ恋人できないままお爺さんになっちゃうよ。好きな人と気持ちが通じ合うのって本当に幸せなんだよ？アオは思い出と恋をしてるんじゃない？誰かと新しい恋をしてみたら？」 「それはわかってるんだけど……龍ちゃん以上に好きになれる人が現れないんだから仕方がないよ」 「じゃあさ、一度日本に行って彼に会ってきなよ。ちゃんと稼いでてお金もあるんだし、休暇をとって行けるじゃない。っていうか、なんで今まで行かなかったのさ」 そりゃ、怖かったからさ。 『もう俺に飛びついてくるな』と拒絶されたのだ。急に俺の頭にも触れてくれなくなったのだ。 会いに行ったところで、「久しぶりだな」と社交辞令を言われるのが関の山ではないだろうか。 「それならそれで、いいじゃない。吹っ切って帰って来るんだよ。そして、新しい恋をするの！アオ、勇気を出して！」 ミゲルはずっと俺が考えていながら実現することが出来なかったことを、言葉にした。 きっとわかっていて俺の背中を押してくれたんだと思う。 そうだよな、このままじゃダメだよな。 思いきって一度、龍ちゃんに会いに行こう。 龍ちゃんもずっと俺が帰ってくるのを待っててくれて両思いになれるなんて都合のいい夢は見てない。 だけど、ずっと好きだったって気持ちを伝えたってバチは当たらないよな？ 俺は休暇を取るためにスケジュールの調整を始めた。 覚悟を決めてしまうと、だんだんと龍ちゃんに会うのが楽しみになってきた。 ずっと恋い焦がれた初恋の相手。きっとますますいい男になっているに違いない。 そんな時、翠から届いたメールで龍ちゃんが婚約したことを聞いた。 今更、自分が龍ちゃんとどうにかなれるとは思っていなかったはずなのに、俺は激しいショックを受けた。 あまりの衝撃にどんな相手かも聞けなかった。 婚約者と結婚に向けて幸せいっぱいの龍ちゃんに「好きだった」と告白しに行くのは、あまりに俺の絵面も間抜けだし、そのあと涙を隠して「おめでとう」を言わなければならないのは辛すぎる。相手にも迷惑でしかないだろう。 結局、俺は何もできないまま不完全燃焼の火を消すこともできず、その後も長い間落ちた気分を引きずった。