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第51話

悪かったといいながら龍ちゃんがソファーに戻ってきた。 俺は腹をくくる。 「龍ちゃん、前に婚約した人とは結婚しなかったの?それとも結婚してから離婚したから独身なの?ここ、ファミリー向けの部屋だよね?」 「結婚しなかった。婚約破棄されたんだ」 「婚約破棄されたって・・・何があったか聞いてもいい?」 しばらく両膝の間で手を組んで視線を落として黙っていた龍ちゃんが、おもむろに顔をあげ俺を見た。 「蒼、俺はバイなんだ。意味、わかるか?」 脳天をフライパンで殴られたような衝撃だった。 「驚いたか?俺は女性も男性もどちらも愛せる。婚約していた彼女とは2年も付き合って、大事に思っていたし、この子となら家庭を築けると思っていたんだ。だが、俺の婚約話を聞いた、彼女の前に付き合っていた男がよりを戻したいと家に押しかけてきたんだ。 いつか彼女とうまくいかなくなるまで待っているつもりだったけど、結婚すると聞いて耐えられなくなったと言っていた」 そのとき婚約者がどんな反応をみせたか容易に想像がついた。 「彼女には理解できなかったんだ。いくら、あいつとは終わっている、お前と結婚したいと思っていると言っても、もう俺を気味の悪い生き物のようにしか思えないようだった」 龍ちゃんはぐいっと缶ビールを飲みほし、ウィスキーのボトルに手を伸ばす。 「蒼もやっぱり気持ち悪いか?」 龍ちゃんは少し寂しげに笑った。 「いいや。くそっ、龍ちゃんに先を越された。いっつも俺の先を行きやがって」 「何ぶつぶつ言ってる?ところで、お前の話したかった事ってなんだ?」 「俺、そんなこと言ったっけ?」 「見てたらわかる。何か大事なことを話したかったんだろう?」 「ああもう!お見通しってか。っていうか、龍ちゃん、俺の話きいたら引くよ。俺の話きいてビビんなよ!」 「何を興奮してるんだ。ちなみに俺もまだ一つびっくりの隠し玉もってるからな」 「なにぃ?・・・その前に、龍ちゃん、これからどうするの?新しい彼女とかいるの?」 俺はさっきの手提げを指さす。 「ん?あれは従妹だ。こっちで叔父が空手道場やってて、高校のとき俺が夏休みに同情の手伝いに来たの知らないか?だいたい、かなえはまだちっこい?あれ、いくつだ?もう22か」 「6つ違いなんて余裕で恋愛対象になるよね?」 「あっちは俺の事おっさんだと思ってるよ。だいたい従妹なんだし・・・ん?俺と獅央は8つ違い・・・そうかあり得るのか・・・。気が付かなかった」 「龍ちゃんこそ、何ぶつぶつ言ってんの?」 「ああ、悪い悪い。で、蒼の話したいことってなんだ?」 「俺がいかにヘタレで病んでてイカれたやつかって話だよ」

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