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第63話 俺の天使 6(色づく天使)

「龍ちゃん、痩せたね」 蒼が心配そうな顔をして俺の肩に手をのせた。 先週、ようやく大々的なプレス発表も終え、流し始めたCMの認知度もまずまずの数字が出てほっと一息がつけた。今日は、チームで軽く打ち上げをし、蒼を誘って俺の部屋に戻ってきたところだ。 「目の下もクマが出来てる。今日は、もう休んだ方がよかったんじゃない?」 「大丈夫だ。明日は2か月ぶりの休みだしな。それに、これ以上お前を待たせるのは悪いからな」 蒼の顔に緊張が走る。 蒼をソファーに座らせ、ウィスキーのボトルとロックアイスを取りに行く。蒼の横に座り、オンザロックのグラスを手渡し、軽く乾杯をして唇を湿らせた。 グラスをテーブルに置き、蒼の方に向き直った。 「蒼、お前に甘えて返事をするのが遅くなって悪かった。でもそのおかげで、俺も大人になった蒼をよく知れたし、じっくり考えることが出来た」 蒼の握った手に力が入るのが見えた。 「蒼、俺と付き合ってくれ。もし、お前がこの半年間の現実の俺を見て、まだ惚れてくれているのなら」 蒼がくしゃりと泣きそうな顔をしたと思ったら、そのまま俺の胸の中に飛び込んできた。 「惚れてるに決まってるじゃないか!この半年、ずっと惚れ直してばっかだったよ!」 額を俺の首筋にぐりぐり押し付ける。柔らかい髪が当たってくすぐったい。 俺は手のひらで茶色い毛を撫でつけた。 「「久しぶりだ」」 声がぴったり重なり、思わず二人で笑った。 「10年以上かかったな」 「うん・・・俺、諦めなくてよかった」 最後は呟くように言って、蒼がそっと体を預けてきた。 「蒼。これは初恋のやり直しじゃない。俺はお前にもう一度恋をしたんだ」 お前がくれた半年間、ずっと俺はお前を見てきた。 子供の頃を彷彿とさせる無邪気さと明るさ、周りを引き込む天性の求心力。 難しい交渉相手に切り込む意外な押しの強さと、偏屈なカメラマンさえ最後には「かなわんなー」と笑わせた茶目っ気。 そして、真っ直ぐ俺に向けられる愛情。 俺の前で見せたお前の中の繊細さや弱さも丸ごと愛しい。 蒼が顔をあげ俺を見つめる。長い睫毛に縁どられた俺の大好きなブルーグレーの大きな瞳。 引き寄せられるようにキスをした。 「龍ちゃん、大好き」 かわいいことを言う蒼を抱き寄せる。何度も角度を変えてキスをする。 「龍ちゃん・・・」 蒼が目をとろんとさせて、首に縋りついてきた。 俺は覆いかぶさるようにして、蒼の口を塞ぐ。舌を深く差し入れると蒼が舌を絡めて応え始めた。静かな部屋に二人の吐息と舌を絡める音だけが聞こえる。 欲望に火が付いた俺は蒼の手を引いて立ち上がった。 蒼の顔がさっと赤くなったのがわかった。

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