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第71話
ううー、眠たい。徹夜明けで帰ってきて2時間は寝たが、重なった疲労で全くこの頭は使い物になりそうにない。
バイク便が届くのが30分後だから、それまでにシャワーを浴びて目を覚ますか。
バスルームを出たところでインターホンが鳴るのが聞こえた。早いなと思いながらバスローブをまとって、室内モニターに向かう。
最初、なんでバスローブ?って思ったけど、確かに便利なんだよな、びしょびしょでもこれさえ着ておけば何とかなるからなどど考えつつ、通話ボタンを押すと案の定、バイク便のお兄さんが映し出された。
オートロックを解除して、部屋まで届けに来てもらうまでにタオルで髪を拭く。
今度は部屋の玄関ベルがなったので、はいはーいと言いながらドアを開けた。
「ひいっ!」
甲高い声が聞こえ、目の前には若い女性が目を見開き、固まっていた。
「あ、あ、あなた、誰ですかっ!」
え?あなたこそ誰ですか?
バイク便さんは?
「あの、お部屋をお間違えじゃないですか?」
「え?だって・・ここに八神って書いてあります!」
女性はドア横の表札をビシッと指さし、こちらを睨みつける。
なに?龍ちゃんの昔の婚約者とか?
これから修羅場が始まっちゃうの?
その時、ポーンとエレベーターが到着する音がして、バイク便のベストを着たお兄さんがこちらへやってきた。
「えー、1503号室、八神様方の花村蒼様で間違いありませんか?こちらにサインをお願いします。」
はいはいと伝票にサインをして荷物を受け取る。
一連の流れを盛大に眉をしかめて見ていた女性は、
「あなた、ここに住んでるんですか?龍晟君は?」
と探るように言った。
えーっと、これはどのように対処するのが一番いいかなと考えていると、今度はバイク便のお兄さんが1階に降りるために呼んだエレベータのドアから、男性が降りてきた。
「ねえ!龍晟君の部屋に知らない人がいるんだけど!」
目の前の女性がその男性に話しかけた。
「なんだって?」
足早に近づいてきたガタイのいい男が、玄関ドアをすごい力でぐわっと開く。
「お前、誰だ?」
「!!・・・虎牙君!?」
「へ?お前・・・蒼か!」
「わあ、久しぶり!入って入って。っと、こちらのお嬢さんは?」
「ああ、従妹だ。」
「あ、もしかしてかなえさん?初めまして、花村蒼です。」
ようやく表情を緩めた彼女は、今度は急に顔を赤らめた。
「おい、ところでお前なんでそんな格好なの?」
虎牙君に言われて、自分がバスローブを一枚ひっかけただけだったことを思い出した。パンツすらはいていない。かろうじて大事なところは腰ひもで前を合わせていたおかげで隠せていたけど、女性はびっくりするよな。
「わ、ごめん!ちょっとリビングで待ってて」
慌てて、クローゼットへ行き着替えて戻る。
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