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第80話

「くっ、悪い・・・」 龍ちゃんは慌ててティッシュで俺の顔を拭う。 「大丈夫だよ。飲んであげるつもりだったのに」 「そんなこと天使にさせられない。それでも、ああ・・・天使を穢してしまった」 優しく丁寧に俺の顔を拭きながらそんなことを言った。 「今までさんざんセックスしてるのに、いまいち基準がわかんないな」 龍ちゃんは両手で俺の顔を包み込み、親指で頬を撫でる。 「お前は俺にはキラキラしすぎてるんだ。いつまでも愛らしくて無邪気で清らかな部分があって俺にとってはやっぱり今でも天使なんだ。このピンクの唇にあんなグロいものを咥えさせたなんて・・・」 そう言ってうつむく龍ちゃん。やっぱりよくわからない。 「天使のあおたん?トラウマになってるの?俺はただの男だよ。人より龍ちゃんが好きすぎるっていうだけの。ふふふ、愛らしくて無邪気で清らか?龍ちゃん、俺にぞっこんなんだね!」 「ああ、そうだよ。自分でも怖いぐらい蒼に夢中だ」 龍ちゃんらしからぬ極甘の台詞をはいて俺をベッドに押し倒す。 今日の龍ちゃんは、どうしたんだろう? 出張帰りで久しぶりだから? さっきたくさん飲んでたから、ほんとは少し酔ってるのかな? でもリップサービスではなく、本音っていう気がするんだよな。 そうだったら、嬉しいなあ。 また甘いキスから始まって、その夜の龍ちゃんは情熱的に俺を抱いた。 今、自分がどっちを向いているのかさえ分からなくなるほど狂わされ、龍ちゃんにしがみついた。 何度も絶頂の高みに引き上げられ、天空から落下するような放出を繰り返し、最後は意識を手放した。 わかっていたのは、抱いている間ずっと「蒼、蒼」と俺の名前を呼んでくれていたこと。 ああ、俺、愛されてる・・・俺は満ち足りた気持ちで温かい霧の中へ落ちて行った。

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