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第81話
うーん。なんだかもう周りが明るい気がする。
重い瞼を上げると、やっぱり窓からカーテン越しに陽の光が差し込んでいる。15階のこのベッドルームの窓の前には覗かれるような建物もないので、いつもレースのカーテンしか引いていない。それにしても明るくないかと考えて、瞬きを繰り返しやっとちゃんと目を開け周りを見回した。
すぐ横で龍ちゃんが片肘を立てて頭を支え、こちらを見て微笑んでいた。
「おはよう」
そう言って反対の手で俺の頬を撫でた。
「おはよ。随分明るいけど、だいぶ寝坊した?」
「ああ。もうすぐ11時だ」
わあ、それは随分ゆっくりしちゃったな。改めて自分の状況を確認すると、自分では着た記憶のないパジャマ代わりのスウェットをちゃんと着けている。
そうだ、昨夜は龍ちゃんにいっぱい愛されて、俺は落ちちゃったんだ。全部やってもらっちゃったんだな。そして、昨日の龍ちゃんが、いつもとちょっと違ったことを思い出す。
その・・・随分、甘い感じだったんだよな。
「これ、ありがと」と自分のスウェットを引っ張りながら言う。
「まあ、俺のせいだしな」
ちょっと恥ずかしそうな顔をする龍ちゃんの腰に腕を回す。
「ねえ、昨日は酔ってた?いつも言わないようなこと、色々言ってたけど。ちゃんと記憶ある?」
「あー、少し酔ってたかもな。でも記憶はちゃんとある。」
龍ちゃんは大きな手で自分の顔を覆いながら答える。なんかますます恥ずかしそうだ。
なんだか可愛いぞ。もうちょっといじっちゃえ。
「じゃあさ、夕べ言ってたのは全部ほんと?一人寝が寂しくなったとか、天使を穢し・・ふぐっ」
俺の言葉を遮るように、龍ちゃんが俺の鼻をギュッとつまむ。そして俺の耳に唇を寄せ、低い声で囁いた。
「天使すぎるお前のせいだ」
耳に届いた波動にぞくっとしている間に、龍ちゃんは「起きるぞ」と言ってベッドから出て行ってしまった。
シャワーを浴びた後、二人で簡単なブランチを作って食べながら、久し振りの二人そろった休日をどうやって過ごすか相談する。
スマホで検索していた龍ちゃんが、画面を見ながら言った。
「この間話していた映画はもう近くのシネコンではやってないな」
「あー、俺たちいつも間に合わないね。すぐ近くにシネコンがあるのに一度も行けてない。でも、いいや。家のTVでオンデマンドの映画見るのでも十分だし」
この家のリビングには、それまでここにあった42インチのTVを龍ちゃんの部屋の壁に移してもらって、俺が買った65インチが収まっている。仕事柄、CMを大画面でよく見たいからだ。
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