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14 side智裕
俺は急いで部屋に戻ると、バルコニーの扉が開いていて潮の匂いが鼻についた。
そこに佇んでいる、細くて綺麗な後ろ姿。俺はゆっくりとその背後に近づいた。
「拓海さん、どうしたの?」
「…あったかい風だね。昨日まで凄く冷たい北風だったのが嘘みたい。」
「う、うん……。」
「俺は…智裕くんの夢の邪魔ばかりしてるのかな……寂しがったり、泣いたりして…。」
拓海さんがどんどん俯いてしまう。ハワイの夜空は日本より明るいからすぐに見えてしまう。
俺は拓海さんの腕を引っ張り、自分の胸に収めた。
「俺は十分夢が叶っているよ。」
「…だって、本当なら弥栄選手みたいに凄い選手になってたんでしょ?去年だってアメリカに行けてたかもしれないんでしょ?」
「拓海さん、俺の夢は…こうして死ぬまで拓海さんを抱きしめて、ずーっと一緒にいることだよ。それは17歳のあの時から変わらない夢だから。」
「智裕くん…。」
「今日だって拓海さんと茉莉と一緒だから来たんだよ。じゃなかったら断ってたし、ね?ほら…顔上げて?」
涼しげな海風がブワッと吹いて、拓海さんの少しの涙が光って、俺はまたキスをした。
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