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てっちゃん
「ほら、直ったぞ」
しばらく黙ってたオオトリテツヤは、自慢そうにニィッと笑いながら、ずいとパーツを差し出してきた。
「……あ」
受け取ってよく見たけど、欠けてたトコは、ゼンゼン分からなくなってた。
「すごい……」
思わず出た声に、「そうだろ!」ニカッと自慢そうに笑ってる。
「うん、すごい。すごいすごい」
嬉しくて、ニコニコしちゃってるススムは、自分の目が尊敬の眼差しで輝いている自覚なんて無かった。
「こ、コレ、つける。元通り」
「あの箱にか」
「うん」
「よし、やっていい」
ずいぶん偉そうに言われたけど、つかまるって言ってたときとはゼンゼン違う、機嫌良さそうな声と顔にホッとした。
中に戻って作業箱に取り付けようとしたけど、はめ込んでたトコから折れてた。やっぱりがっかりしてると「どうした~?」声がかかった。
「こ、ここ、折れちゃってるから、付け方考えないと……」
「なんだよ、貸せ、見せてみろ」
また強引にパーツを持っていったオオトリテツヤは、折れたトコをじっと見てから作業箱に顔を近づけ。はめ込んでたトコをまた、大きな目をもっと大きく見開いてじっと見てから、ススムをニカッと見た。
ススムはなぜかドキッとした。
「ばっかだな、同じじゃん。ボンドでくっつけてやるよ」
「え、でも」
ボンドじゃ、すぐ取れちゃうような気がして、ススムは考えた。
「ココ彫って穴開ければ……そんで、コッチも彫って棒入れてはめ込む方が……」
その方が丈夫だしカッコイイ。もう壊れるのイヤだから、壊れないようにしたい。
けどオオトリテツヤは「んん? どこに、なに?」とか言ってる。
「だから……」
ススムは一所懸命説明したけど、説明とか得意じゃ無いから伝わらなくて、オオトリテツヤは「はあ? わっかんねえよ!」とかどんどん怒ってくる感じで、困っちゃったけど頑張ってしゃべる。
そしたらやっと「ああ! なるほどな!」声上げてニカッと笑ったから、めっちゃホッとした。
「そういうことか。だな~、その方がカッコイイ。おまえやるなあ」
ニコニコ言われて、うわあ、とか思って嬉しくなってドキドキしちゃって、なぜだか焦る。
「おまえコレ全部やったの? 木のカタマリから作った?」
「うん」
「へえ。……けっこう良く出来てんな」
褒められた。テレビから出てきたみたいなひとに。
なんかポーッとしちゃって「えへへ」とか笑っちゃう。
「よし、おまえのこと、これからススムって呼んでやる。オレのことはテツヤ様と呼べ」
「……ええっ?」
ビックリしてると、「てっちゃん、それはないでしょう」男の人が笑いながら声をかける。
「え、てっちゃん……?」
「なんだおまえ、そう呼びたいのか」
「あ、え、……うん」
「しょうがねえなあ~。んじゃあ、それでイイよ」
「え、ていうか、オレ……つかまるんじゃ」
「特別に許してやるよ。オレ様に感謝しろ」
「………………」
ものすごく威張って、でも、ものすごく嬉しそうに、てっちゃんは言って「つうか暗いな」と眉を寄せた。
「ああ、忘れてた」
男の人(てっちゃんのお父さんの会社の人で桑田さんて名前だった)が倉庫の明かりを点けた。すると、とても広い倉庫の中には色んなものがあった。今までよく見えなくて分かんなかったんだ。
「うわあ、こんなのあったんだ。あ、これ、コレも使える!」
ススムはめっちゃ興奮してたら、てっちゃんは不思議そうに言った。
「そんなん、なにするんだ?」
「コレはこんな風にしたら……それにこういうのくっつけて……」
ススムの下手くそな説明を、てっちゃんはちゃんと聞いてくれて、
「なるほどな~、おまえ、なかなかやるな! オレ程じゃないけど」
とか言ってニコニコした。
「つうか、きったねえな!」
てっちゃんがキレ気味に言ったから、慌てて言いたす。
「ちゃんと整理したいな。こんなに広いんだもん、整理したらすごく良くなるよ」
「整理か。そういうの大事だってパパも言ってた」
納得したてっちゃんと二人で床に落ちてるものを拾い、空っぽだった引き出しや棚にしまう作業を始めた。種類別にまとめようと思ったけど、てっちゃんが「面倒くせえ!」とキレたので、適当に放り込む。
その間、桑田さんは外回りを見るとか言って消えた。
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