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お前の名前だろ
【麗彪 side】
あの新名 が、やけに美月 の事を構いたがる。
気付いてすぐ、何のつもりだと問い詰めたが「お嬢は俺が狐さんに似ていると仰るんで」と、相変わらず何考えてんのかわからねぇ笑顔で言いやがった。
兎に角、ヤツが美月に懐いたって事は間違いない。
今でこそ親父には従っているが、昔からヤバい事しかしてこなかった新名が。
あんなヤバいヤツまで手懐ける美月は、俺より凄いんじゃないか・・・。
「あっ!ふうせん!」
榊 家に着くと、玄関が花やバルーンアートやらで飾り立てられていた。
これ、あの新名がやったのか・・・?
「お帰りなさい、お嬢」
「ただいま、新名さんっ」
「みっちゃん、お帰り」
「ぱぱー!」
新名も親父も、跡取りである俺は無視か。
「あいつら具合はどうだ」
「まあ、問題ねぇよ」
親父が珍しく怪我の心配をしている。
美月のためだろうな。
駿河 はギプスが取れてリハビリ中、時任 は最初から何もなかったかの様にしてたから、大丈夫だろう。
カンナを付けて置いてきた。
こっちは人が多くて、良く言えば賑やかだ。
不本意だが美月は気に入っているらしい。
だがまあ、気に入ってるってだけだ。
マンションで2人きりで過ごしていた時に、俺と2人きりと人が大勢いる実家はどっちがいいか聞いてみたが、美月は俺と2人がいいと即答したからな。
「すごいっ!プレゼントの箱がいっぱいっ!」
大部屋に、綺麗にラッピングされた大小様々なプレゼントが積まれている。
黒い箱が混じってるが、たぶんそれは俺宛だろう。
美月の前で開けて問題ないブツだろうな。
「「「お嬢、若、お誕生日おめでとうございます!!」」」
「きゃあーっ!すごい!それなあに?」
待ち構えてた舎弟たちが放つクラッカーに大興奮の美月。
ほんと可愛いな。
自分でも試しにやってみたいと、びくびくしながらクラッカーの紐を引く姿を動画に収める。
「みっちゃん、これはパパからのプレゼントだ。開けてごらん」
「ありがとうぱぱ!・・・はぅっ!!」
美月の男の子心をがっちり掴む、4WDモンスタートラック。
庭にオフロードコースでも作ってやるか・・・。
「庭にコースも作ったから、いっぱい走らせてやりな」
「お庭で!?やったあ!!」
親父のクセに・・・。
「これは俺からです」
「ありがとう新名さん!・・・ふぁ・・・!」
新名からのプレゼントは、狐のぬいぐるみ。
わざわざ後から着けたであろう黒い革製の首輪が着いている。
「かわいい・・・!」
美月、そんなモンぎゅってすんな、ポイしろ。
「狐の真叶 です。可愛がってください」
「まどか・・・だいじにします!」
真叶はお前の名前だろうが、新名。
いい度胸してんなぁ・・・美月がいなかったら今すぐここで八つ裂きにしてんぞ・・・。
「麗彪さん、他意はありません。真叶はお嬢の側に居たいだけです」
「ああ゛!?」
その胡散臭え笑顔をやめろ。
他意があろうがなかろうが、美月の側になんて置くかよ。
「麗彪さん、とらきちにお友だちできたよ!とらきちとまどか、仲よくなれるよね!」
「・・・そーだな。でも美月の一番の友だちはとらきちだよな?」
「うんっ!」
命拾いしたな、新名・・・。
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