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水族館デート

麗彪(よしとら)side】 昨夜の美月(みつき)は、間違って飲んだシャンパンで酔ってしまった。 風呂に入れてドライヤーをかけてやり、ベッドに寝かせたら即就寝。 手を出すどころか、具合が悪くなりはしないかと心配で仕方なかった。 念の為カンナに様子を見てもらい、問題ないだろうとの事で一緒に寝たが、何故もっと気を付けなかったのかと後悔した。 「・・・んーぅー・・・ぉはよー、よしとらさん・・・」 「おはよう美月。頭痛くないか?気持ち悪い?」 「んー?だいじょーぶ。なんでぇ?」 あ、覚えてないのか。 間違えて俺の酒を飲んだ事を話したが、やはり覚えてはいないようだった。 「そんな事よりっ!でえとっ!今日デートだよっ!」 「ああ、それはちゃんと覚えてたな」 良かった、覚えててくれて。 身支度をして朝飯を食ってから、美月と2人で車に乗り込み目的地へ向かう。 今日の美月はマゼンタのタンクトップに白いオーバーサイズTシャツ、ショートジーンズとスポーツサンダルという、可愛いが過ぎるコーデ。 男の子だと見破れるヤツがいるだろうか・・・。 「麗彪さん、Tシャツおそろいだね・・・ふふっ」 駿河(するが)から美月へのプレゼントに入っていたこのブランド物のTシャツ、俺のサイズも入っていたのでそうゆう事だろうと着てきた。 美月が嬉しそうで俺も満足だ。 「ついたー!人いっぱいだねー」 「そうだな。美月、手ぇ繋ごう」 「うんっ!」 しっかり恋人繋ぎをして、スマホのチケットで入館する。 入ってすぐにいくつかの水槽があり、美月は大はしゃぎだ。 「あっちも水そうある!すごいね!大きいね!金魚の水そうよりずうーっと大きい!」 リビングに水槽を置いて、祭りで取ってきた金魚を飼っている。 基本的には美月が一生懸命世話をしていて、時任(ときとう)とたまに来る片桐(かたぎり)も世話係だ。 「麗彪さん、あの魚は?いっぱいいる!」 「たぶん・・・イワシじゃないか?」 「あっ、エイだっ!変なかおー」 「ほら、タイいるぞ。美月こいつの刺身好きだろ」 午前中は美月の気が済むまで水槽を眺め、館内のレストランで昼飯を食ってからイルカショーを見に行く。 イルカの大ジャンプや水飛沫(みずしぶき)に大興奮する美月を(かば)いながら、そういや俺も初めて見たな、と思った。 「イルカすごかったね!頭いいんだね!麗彪さん、ぬれなかった?」 「ちょっとな。イルカショーは俺も初めて見たんだ。面白かったな」 俺の言葉に、美月が大きな瞳をまんまるにして驚いた。 いったい何をそんなに驚いて・・・。 「麗彪さんの初めて、ぼくもいっしょに初めてできてうれしい・・・」 可愛い事言いやがる。 我慢する必要もないのでキスした。 人が居ようが、美月が男の子に見えようが女の子に見えようが、俺には関係ない。 美月も他人の目は気にしてない・・・と言うか俺しか見てないからな。 その後はペンギンに飼育員が餌やりしてるのを見た。 次はサメの水槽で、デカいサメだけが悠々と泳ぐ姿に感動する美月。 クラゲが大量に浮かぶ水槽の前では30分も眺めていた。 マンションでも飼うか・・・いや、どーやって世話すんだこれ。 意外にも気に入ったのはカワウソだったらしく、帰りにぬいぐるみをねだられた。 「楽しかったねえ!また来たい!麗彪さんと2回目水族館もいっしょがいい!」 「何回目でも俺と一緒に来ような。次はシャチがショーやってる水族館にするか」 「海のギャング!?」 よく知ってんな。 図鑑大好きだもんな。 このまま帰宅すると思っている美月を車に乗せ、近くのハイエンドホテルに入る。 美月には内緒にしていたが、今日は泊まりだ。 「ここ、どこ?」 「ホテル。お泊まりだ」 「おとまり?」 駿河が連絡を入れていたのか、コンシェルジュが来てすぐに部屋へ案内された。 最上階のスイートルーム。 大きな窓からは海が見える。 「海だぁ・・・」 晩飯はホテルのレストランに行こうかと思ってたが、景色に夢中な美月を後ろから抱きしめて、ルームサービスにしようと決めた。 飯より先に、美月から喰ッテシマオウ。

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