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観賞会

麗彪(よしとら)side】 「で、なんで時任(ときとう)片桐(かたぎり)なんだよ」 納得いかねぇ。 美月(みつき)の初めてのおつかいに同行するのは俺であるべきなのに。 「お前が一緒に行ったら、何でもかんでも手ぇ出して助けちまうだろうが。新名(にいな)もな。時任片桐(あの2人)ならボディガードとしても荷物持ちとしても申し分ない上に、初めてのおつかいの何たるかを理解してる」 ・・・確かに。 だが美月の初めてのおつかいを見守りたい。 少し離れて後を付けようと思ったが、それも止められた。 「ちゃんとカメラを配置してるよ。抜かりはねぇ」 「まじか」 「リアルタイムで見られますよ〜。モニター用意したんでみんなで見守りましょう」 駿河(するが)に言われ奥の部屋に行くと、モニターが10台並べられていて、その内の2台に別アングルで、振袖姿の美月が映っていた。 思い付きでやったんじゃなく、前もって準備してやがったのか。 「店にも頼んである。うちの可愛いお嬢が買い物に行くってな」 「成程」 この為にわざわざ元旦に店を開けさせたのか。 「お、団子屋に興味を示したな」 「我慢しちゃいましたね〜、買ってもいいのに〜」 「今度は公園が気になってるわね」 「お嬢、明日行きましょう」 「あ、通り過ぎた、美月、通り過ぎたぞ!」 「落ち着け麗彪、ほら気付いて戻ったぞ」 美月の初めてのおつかい観賞会は大盛り上がりだ。 「あ〜そっちじゃないですよ〜」 「何やってんだ時任、ちゃんと誘導してやれよ!」 「麗彪くん、それじゃ意味がないじゃないの」 「ちゃあんと自分で修正してるよ。みっちゃん偉いなあ」 「ああ、お嬢、ちゃんとお釣りも受け取れましたね!」 酒屋での買い物も終え、あとは帰ってくるだけだ。 無事に帰って来てくれ・・・。 「おい、なんだあのガキども!美月を見てんじゃねぇよ殺すぞ!」 「大丈夫です、時任が気付いてガードして・・・あ、片桐が睨んだんで消えましたね〜」 「ちょっと、この先にいるカメラに酔っ払いどもが映ってるわ!美月ちゃんが絡まれちゃうっ!」 「・・・おい藤堂(とうどう)(やなぎ)の近くにいる酔っ払いを片付けろ」 親父がカメラ持ってるやつに電話で指示出しをし、美月が通る予定の路上から酔っ払い(障害物) が消えた。 よし、もうすぐうちの敷地に入るな。 「迎えに行く」 「麗彪さん、玄関で待ちましょうよ〜」 「俺も行くかな」 「雅彪(まさとら)さんまで・・・」 玄関から出て、敷地の外まで出る。 親父と並んで美月がこの先の角を曲がって来るのを待つ。 「そういや、いくら入れたんだ?」 「とりあえず50」 「俺には?」 「よっちゃんも欲しかったのかい?年末におとし弾くらったんだろ?それじゃ足りないか」 「(かす)っただけだ。可愛いエロナースに診てもらったしな・・・お、帰って来た」 角を曲がり、すぐ俺たちに気付いて、嬉しそうに手を振る美月。 ああ、走るな転ぶぞ。 「お帰り、美月」 「ただいまぁ!」 「ちゃんと買えたな。みっちゃん偉いなあ」 「うんっ!楽しかった!時任さんと片桐さんも、助けてくれてありがと!」 「俺は付いてっただけだ」 「頑張りましたね、美月くん」 美月を連れて(さかき)家に戻ると、美月が楽しそうにみんなに感想を話し出す。 頭が良く、勉強が出来る美月だが、まだ世間知らずな所は多い。 もう少し、自分で何かやらせてみるのも、いいかもしれないな。

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