137 / 300
観賞会
【麗彪 side】
「で、なんで時任 と片桐 なんだよ」
納得いかねぇ。
美月 の初めてのおつかいに同行するのは俺であるべきなのに。
「お前が一緒に行ったら、何でもかんでも手ぇ出して助けちまうだろうが。新名 もな。時任片桐 ならボディガードとしても荷物持ちとしても申し分ない上に、初めてのおつかいの何たるかを理解してる」
・・・確かに。
だが美月の初めてのおつかいを見守りたい。
少し離れて後を付けようと思ったが、それも止められた。
「ちゃんとカメラを配置してるよ。抜かりはねぇ」
「まじか」
「リアルタイムで見られますよ〜。モニター用意したんでみんなで見守りましょう」
駿河 に言われ奥の部屋に行くと、モニターが10台並べられていて、その内の2台に別アングルで、振袖姿の美月が映っていた。
思い付きでやったんじゃなく、前もって準備してやがったのか。
「店にも頼んである。うちの可愛いお嬢が買い物に行くってな」
「成程」
この為にわざわざ元旦に店を開けさせたのか。
「お、団子屋に興味を示したな」
「我慢しちゃいましたね〜、買ってもいいのに〜」
「今度は公園が気になってるわね」
「お嬢、明日行きましょう」
「あ、通り過ぎた、美月、通り過ぎたぞ!」
「落ち着け麗彪、ほら気付いて戻ったぞ」
美月の初めてのおつかい観賞会は大盛り上がりだ。
「あ〜そっちじゃないですよ〜」
「何やってんだ時任、ちゃんと誘導してやれよ!」
「麗彪くん、それじゃ意味がないじゃないの」
「ちゃあんと自分で修正してるよ。みっちゃん偉いなあ」
「ああ、お嬢、ちゃんとお釣りも受け取れましたね!」
酒屋での買い物も終え、あとは帰ってくるだけだ。
無事に帰って来てくれ・・・。
「おい、なんだあのガキども!美月を見てんじゃねぇよ殺すぞ!」
「大丈夫です、時任が気付いてガードして・・・あ、片桐が睨んだんで消えましたね〜」
「ちょっと、この先にいるカメラに酔っ払いどもが映ってるわ!美月ちゃんが絡まれちゃうっ!」
「・・・おい藤堂 、柳 の近くにいる酔っ払いを片付けろ」
親父がカメラ持ってるやつに電話で指示出しをし、美月が通る予定の路上から酔っ払い
が消えた。
よし、もうすぐうちの敷地に入るな。
「迎えに行く」
「麗彪さん、玄関で待ちましょうよ〜」
「俺も行くかな」
「雅彪 さんまで・・・」
玄関から出て、敷地の外まで出る。
親父と並んで美月がこの先の角を曲がって来るのを待つ。
「そういや、いくら入れたんだ?」
「とりあえず50」
「俺には?」
「よっちゃんも欲しかったのかい?年末におとし弾くらったんだろ?それじゃ足りないか」
「擦 っただけだ。可愛いエロナースに診てもらったしな・・・お、帰って来た」
角を曲がり、すぐ俺たちに気付いて、嬉しそうに手を振る美月。
ああ、走るな転ぶぞ。
「お帰り、美月」
「ただいまぁ!」
「ちゃんと買えたな。みっちゃん偉いなあ」
「うんっ!楽しかった!時任さんと片桐さんも、助けてくれてありがと!」
「俺は付いてっただけだ」
「頑張りましたね、美月くん」
美月を連れて榊 家に戻ると、美月が楽しそうにみんなに感想を話し出す。
頭が良く、勉強が出来る美月だが、まだ世間知らずな所は多い。
もう少し、自分で何かやらせてみるのも、いいかもしれないな。
ともだちにシェアしよう!

