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美月飲酒事案
【麗彪 side】
20歳 になる前に酒を飲んだ事を懺悔して、赦してもらった後。
何故かやたら酒を飲みたがる美月 を腕の中に閉じ込めて、なんならこのまま寝かせちまおうと思っていたんだが。
「んんん"ー・・・ぅゔ・・・っ」
・・・おい、ぐずり出したぞ。
せっかくの誕生日なのに、これはまずいだろ。
「どした?眠い?ベッドで寝るか?」
「ゔぅ・・・」
これは・・・来るか、ギャン泣き。
ちょっと嬉しい・・・いや、だめだろ、誕生日なのにギャン泣きさせるのは。
「美月、そんなに酒飲みたいのか?」
「そんなに美味しくないですよ〜」
「具合が悪くなってしまいますよ」
「お嬢の好きなリンゴジュースにしましょ?ね?」
時任 たちが何とか宥 めようとしている。
が、俺の胸に顔を埋めたまま唸り続ける美月。
「美月ちゃん、じゃあちょっとだけ飲んでみる?リンゴ味のやつ」
まさかの環流 の許可が下りた。
・・・リンゴ味の酒なんてあったか?
「念のため用意しといて正解だったよ。度数が低いカクテル」
そう言って、キッチンで缶からグラスに注いだ炭酸飲料を持ってきた。
確かにリンゴの匂いだ。
「飲むぅっ!」
ぱっと顔を上げ、嬉しそうに受け取る美月。
ああ、まじか、俺の美月が不良に・・・。
「・・・んっ」
「美味しい?」
「・・・んー、おいしい?」
疑問系だな。
ほら、別に美味 くないだろ、酒なんて。
「みんな、なんでお酒飲むの?」
「えっ!?・・・えっとぉ・・・なんでかなぁ、片桐 さん?」
美月の質問に焦った環流 が、片桐に振る。
年長者はなんと答えるか・・・。
「な、なんで、でしょう・・・新名 さん?」
お前も答えられねぇのかよ。
振られた新名は・・・。
「わかりません!駿河 さんはなぜ飲むんですか?」
狐め、潔く駿河に振ったな。
駿河は・・・。
「俺もわかりませんね〜。いかがですか、時任さん?」
何だその実況解説みたいな話の振り方は。
だがこの流れはまずいな。
ここで時任 が答えてくれねぇと、俺に振られるんじゃ・・・。
「知らん。美味 いと思うから飲む。美味 くないなら飲まない。美月はこれ美味くないんだろ?なら飲むな」
美月の手からグラスを受け取り、残りをぐっと一気飲みしやがった。
おい、なに美月の飲み残し飲んでんだよ!
それは俺の特権だろうが!
「みんな、わかんないけど、お酒美味しくて飲んでるの?麗彪さんも?」
「え・・・っと、はい、そうみたいです」
まあ、既に習慣みたいなとこもあるけどな。
仕事柄、飲めるに越した事はないし。
「そっか・・・20歳になったら、お酒美味しいって、思うよおになるかなぁ・・・」
「そ、そうかもな。まだちょっと早かったんだろ。2年後にまた確かめよう?」
「うんっ」
納得した美月は俺の腕の中でうとうとし始めて、そのまま眠ってしまった。
昼間はプールではしゃぎまくってたしな。
可愛い・・・と眺めていたら、環流がさっきキッチンでグラスに注いだ缶を持ってきた。
「おい、それ・・・」
「ノンアルカクテルでしたぁ」
その手があったか。
「これこそ、何のために飲むんだろうな」
「気分じゃないですか〜?」
「缶、潰しておきます。美月くんが見たら本物が飲みたいと言い出すかもしれないですし」
片桐が缶の残りを飲み干してから、両手でぐしゃっと潰した。
これであと2年は、美月飲酒事案は避けられそうだ。
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