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美月ちゃんがええねん!

麗彪(よしとら)side】 裏の仕事の事で少し(あや)と話をしておきたかったので、美月(みつき)に留守番を頼んで外に出た。 入れ違いに帰って来た片桐(かたぎり)新名(にいな)が綾の存在に愕然としていたが、美月が喜んでいる様子を見て諦めた様だ。 「なぁなぁ、やっぱ美月ちゃん欲しいねんけどぉ」 近所の喫茶店で、座るや否や唐突に綾が言った。 「馬鹿か。やる訳ねぇだろ」 「バカ()うなやアホぉ」 こいつ、欲しいって冗談で言ってんだよな? さすがに本気じゃ・・・。 「なんで籍入れてもぉたん?ほんまに(さかき)の子ぉになってもぉたやん・・・どぉやって雅彪(まさとら)さん説得したらええねん・・・」 「説得すんな。した所で名実ともに俺の妻だっつの。お前のモンにはならねぇよ」 「まだチャンスある・・・なぁ、まさか妊娠させてへんやろな?あんな華奢な子ぉに出産とかさせんといてや!?死んでまうっ!」 「どの立ち位置で言ってんだそれ。そもそも美月は・・・」 ・・・あれ、そういやこいつ、美月が男の子だって知ってたか? はっきり言ってはいなかったが、もしかして・・・。 「なあ、綾」 「なんや?」 「美月は男の子だから妊娠しねぇぞ」 「・・・・・・え?」 ああ、やっぱ美月の事、女の子だと思ってたんだな。 籍を入れて連絡してきた時も、美月が未成年だってとこしか気にしてなかったし。 「ほな、なんで婚姻届受理されとん?」 「親父が美月の性別を偽って就籍手続きしたからだ」 「はぁ・・・親父さん、思い切った事しはるなぁ・・・」 美月が本当は男の子だと知ったなら、もう欲しいとか言ってこなくなるか? それとも・・・。 「ほんなら妊娠させて既成事実作るんはムリかぁ・・・」 「やめろ殺すぞ」 諦める気はなさそうだ。 まあ、無駄だがな。 「だぁってぇ、美月ちゃんパンダリオンが好きやって・・・悪もんでも、好きになってくれる子ぉなんやって・・・」 「極道(やくざ)な所に惹かれるオンナだってそこらにいるだろ」 「そんなん嫌や!純粋無垢でふわふわでキラキラでほっこり甘い美月ちゃんがええねん!」 「気持ちはわかるが諦めてくれとしか言えねぇ」 まあ、美月を知れば、男の子だろうが女の子だろうが惹かれるのはわかる。 だが譲らん、断固譲らん。 「美月になんかしたら、榊家(うち)と抗争になんぞ」 「まじかぁ・・・そらやばいわぁ・・・でも美月ちゃんの事諦められへんわ・・・こんな欲しくてたまらん子ぉ初めてやねん・・・」 「はあ?」 こいつ、本気で引き下がらない気か? 初めて会った時から、美月は俺の嫁だってわかってただろ。 籍まで入れた今になって、なんでそんな事・・・。 「俺、本気で美月ちゃん口説く。美月ちゃんが俺を選んだら、よっちゃん(いさぎよ)う別れて?」 「死んでも別れるかっ!!」

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