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Endless Night【8】

『これはこの薬のヤバいとこでもあり、今回みたいな時ならありがたいとこでもあるんだけどな…病院行っても中和させる薬はねぇ。ただひたすらのたうち回って薬が体から抜けるまで我慢するか、体と脳味噌が満足するまで快感を味あわせるしかないんだよ。薬が一回抜けちまえば、覚醒剤や大麻みたいに体の一部に残留物が蓄積されるってわけでもないらしい。だから今さえ乗り切れば、もしこのクソ野郎が警察にチクろうが何しようが、充彦が捕まるなんて事にはなんねぇってわけだ』 「なるほど…確かにヤバいね。現物持ってるか薬キメてる状態の時以外は逮捕もできないってわけだ? 現行犯以外は無罪って事だもんね」 『そういう事だな。警察も、内偵はしてても摘発まで持っていけねぇ組織が増えてるらしいわ。というわけで、お前はしばらく充彦から離れてろ』 「……というわけの意味がわかんないんだけど?」 『お前、俺の話聞いてたか? しばらくの時間我慢させるか、充彦満足させるしかねぇんだぞ?』 「満足させりゃいいってだけの事だろ? 別にいつもと変わらないよ」 ぐっしょりと湿る充彦の中心をユルユルと刺激しながら、社長の言葉を鼻で笑ってやる。 けれど返ってきた声は、思っていた以上に深刻な気配を漂わせていた。 『いつもがどんなもんか知らねぇけどな、元々桁外れに精力の強い充彦の理性の箍がぶっ壊れてんだぞ。お前の体がバラバラになっても腰振るのやめられない状態なんだってわかってんのか!?』 「俺の体がバラバラになりそうでも、意識失って白目剥いててもやめない奴だからね…大差ない。あの普段の充彦よりも更にケダモノになってるとか、楽しみなくらいだっての』 俺の言葉を本音と取ったか強がりと取ったか、スピーカーからは諦めを多分に含んだ大きなため息が聞こえる。 しかし充彦はまだ諦めていないのか、俺の手を振り払うだけの力も無いくせに懸命に頼りなく首をイヤイヤと振っていた。 まあ、ここまでくれば充彦の意思なんて無視だ。 『んで? このクズはどうするよ。あんまり血生臭い真似はしたくねぇし、借りも作りたくはないんだが…なんせ航生も絡んでやがるからな、面倒なら専門の業者呼んで掃除してもいいぜ?』 「俺らは…ヤクザじゃない」 社長の不安もわかる。 このまま少し痛い目に遭わせて解放したところで、おそらくはしばらく身を隠しておいてほとぼりが冷めればまた逆恨みから俺達に悪意を直接向けてくるだろう。 現に航生の事は自分が人を大切にしなかった事、法律に則った正式な契約を交わさなかった事が原因なのに、助け出した充彦に罠を仕掛けてきた。 このまま野放しにすれば次は間違いなく航生に狙いを定めるだろうし、航生は充彦や俺に比べるとまだまだ甘い所があるからその手に落ちてしまうかもしれない。 そんな事態は絶対に避けなければいけないし、何より……ちょっとお仕置きされただけで無罪放免だなんて、俺の気持ちが収まらないというのが正直なところだ。 かといって、俺の一言で命が一つ惨めに消えていく…なんて事もまっぴら御免だ。 「俺達には俺達なりのやり方があるでしょ。暴力も命のやり取りも…それは俺らの仕事じゃない」 『そりゃあそうだけどな…このまんま逃がしたら、また今度は何をやらかすか……』 「このまま逃がしたりしない。けど勿論、二度と俺達に逆らう事なんてできないようにしないとね…社長、悪いけど魔妃さんに調教頼んでもらえる?」 『ああ…なるほど…魔妃か…そこは気付かなかったな。わかった、まあお前と充彦が絡んでるとなりゃ断るわけはないだろうが、とりあえず急いで時間作ってもらうわ』 魔妃さんというのは、以前は可愛い系で有名だった元AV女優だ。 現在特定の店には所属せず、SMクラブで新人M女性の教育や調教をしたり、見事な縄捌きで観客までステージで縛り上げるという緊縛ショーに出演しているプロの女王様。 俺も充彦も共演経験が特別多いわけではなかったけれど、可愛いロリ系エロで売っていた彼女の秘めた嗜好に早いうちから気付いた事で色々と相談に乗り、女王様として生きていく為の手筈を整えてやったのだ。 望まないまま無理矢理書かされたという所属事務所との契約書を手に入れ、その契約の無効を認めさせる為に弁護士を引き連れてそこに出向き…… まあ、言ってみれば航生と似たような境遇だった彼女を、似たような方法で助け出したのが俺と充彦だった。 それ以来彼女にとって俺達は絶対的な恩人という立場になっているらしい。 『あいつの責め苦に堕ちなかった男はいないっていうしな…』 「一回見せてもらったけどね、あれはすごいね…天才だと思うよ、女王様の。屈辱と快感の与え方が絶妙なんだよね…俺も本格的に調教されたら、堕ちちゃうかもよ?」 『よく言うよ…そんな魔妃が、普通のセックスでほんとにエクスタシー感じたのは、お前と充彦だけだって公言してんじゃねぇか。堕とされる前に、お前が堕とすだろうがよ』 「さあねぇ…魔妃さんがほんとに感じてくれてたのかどうかは俺じゃわかんないし。とりあえずね、費用はいくらかかってもいいから、とことんプライド踏みにじって、とことん快楽に溺れさせるように頼んでくれる? 真性のサディストでゲイの藤巻が、女性の手で喘がされ泣かされ、心では拒んでるのに体が彼女から離れられなくなるなんて…これこそ最高のお仕置きだと思わない? 暴力じゃなく快楽で屈服させなきゃ俺達じゃないでしょ?」 『いっそ殺される方がマシだなんて思うかもな』 「死なせないよ、そんな楽させてやるもんか。たぶん魔妃さんの好みではないと思うんだけど、ちゃんと言い付け守れたら時々ご褒美あげる程度には飼い犬として可愛がってあげてって頼んどいて。なんなら普段は社長の番犬にして見張ってもらってもいいけど?」 『いらねぇよ、あんなコンプライアンス意識の低いバカ。まあ、魔妃にはその辺も上手く頼んどいてやるわ』 「よろしくね。まあ魔妃さんがどうしてもいらないって言った時の為に、女王様に縛られて犯されながら涙とザーメン垂れ流してる写真だけでも撮っといて」 『……暴力はダメで、脅迫ならいいのか?』 「保険だよ、保険。今度俺らの前に現れたら、女にケツ掘られてヒンヒン泣いてる写真ばらまくぞってね。さて…ぼちぼち着くわ」 宮本さんの見事なドライビングテクニックのおかげで、体を大きく傾けるような事もなくマンションのエントランス前にワゴン車は静かに横付けされた。 『薬の効果がどれくらいの時間続くのか、正直わからねぇ』 「はいはい…わかってるよ」 『念のために、明後日まではお前の仕事空けとくから、まだ長引きそうなら改めて連絡してくれ』 「えー!? さすがに明後日以降の仕事にまで影響出ちゃうのはまいるなぁ…」 『念のためだっての。だから…充彦の事、頼む』 「頼まれるまでもない。充彦を楽にしてあげられるのは俺だけなんだから」 充彦の溢れさせた蜜で湿った右手の指先を舐め、宮本さんに目配せを送る。 すべてを悟っているらしい宮本さんはすぐにドアを開けると俺とそれぞれ両側から充彦の体を支え、二人がかりでゆっくりとエントランスを抜けていった。

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