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さあ、遊んでみよう!【2】

【航生×慎吾】 その日の航生くんは、仕事から帰ってきたときからなんやちょっと態度がおかしいなぁとか思ってた。 ソワソワしてるみたいな、でもちょっと申し訳無さそうな、あんまり普段見ぃひん顔。 『お帰り~』って飛び付いたら、そんなもん誰も見てるわけなんか無いのに慌ててキョロキョロ周りを窺ってみたり。 『どしたん?』て聞いても『いや、別に』なんて額に汗浮かべながら言うから、それ以上は俺からは聞けへん。 なんか言いたい事あったら自分から言うやろうし、俺を裏切るって意味での疚しい事は絶対無いんだけは間違いない。 まあそのうちボロ出すか、我慢できへんで自分で口を開くやろう。 そう思って今はほっとく事にした。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 事が起こったんは、俺が風呂から上がった時。 仕事の時のカバンを覗き込んではため息をつき、また覗き込んでは照れたようにニヤニヤする...なんて不審者そのものみたいな行動を取ってた。 その行動に夢中で、俺が出てきたんも気づいてへんかったらしい。 「何見てんのん?」 ソファの背後からそっと近づき、俺も中を覗くみたいに肩口からヒョッと顔を出してみる。 ようやっと気づいた航生くんはそりゃあもうパニックで、『さあ、疑え!』って言わんばかりの勢いでカバンを腹の中に抱え込んだ。 その態度にはさすがの俺もちょっとムカつく。 そない俺から隠さなあかんモンて何? 疚しい事なんて全然無いやろうって信じてる俺を裏切んのん? ちょっと俺の顔色が変わったんに気付いたんか、航生くんは『誤解だ!』とでも言いたげにブンブン頭を振ると、物凄くバツの悪そうな顔でソ~っとカバンを開いた。 いつものノートと筆箱、それにスケジュール管理用のタブレットと...ん? 底の方に埋もれてるのは...バ、バイブレーター!? 「航生くん、これ......」 「わーーーっ」 俺がカバンに手を突っ込んだら、航生くんはますます慌てるようにアワアワバタバタしながら顔を真っ赤にする。 俺は遠慮なくそれを手に取り引っ張り出した。 まあ、長さはいわゆる普通のバイブレーターくらい? あんまり俺らはそういう『普通』のバイブとか触る機会は無いんやけど、そんなもんやと思う。 全体的にはかなり細めで、まあアナル用の物と変われへんくらいか。 ただその形状は、わりと単純なスティックタイプが多い俺らの使う物とは違い、ゆるやかに湾曲した本体の先にはボール状の膨らみがある。 『あぁぁぁぁ......』って力なく叫びながら、航生くんは俺の手元を見てガックリ肩を落とした。 「......ごめんなさい...」 「ごめんなさいの意味がわかれへんなぁ。それとも何? ごめんなさいを言わなあかんような相手にコレ使うつもりやったん?」 「ち、違います! それだけは! それだけは本当に違いますから!」 「そしたらごめんなさいはええから、こんなモン持ってる理由教えて?」 航生くんはしょぼくれたまんま、ポツポツと昼間あった事を話し出した。 みっちゃんと一緒やったヌードの撮影現場に、アダルトグッズの会社の人が遊びに来た事。 普段は女性用のグッズしか作ってないけど、今回その女性用の物をを改良して男性のアナルオナニー用のグッズを開発した事。 それぞれパートナーに使ってもらって、使用感を聞かせて欲しいと頼まれた事。 そして...自分は断ったものの、みっちゃんに『本格的にアナニーしてる姿とか、一回見てみたくない?』と言われ、つい好奇心に負けて受け取ってしまった事。 「本当に...ごめんなさい......」 「航生くんは、俺がそれ使うてアナニーするとこ見てみたいん?」 「い、いやっ、そんな...そういうわけじゃなくて......」 「見たいん? 見たないん?」 「あの...興味...ありました......」 「......そう。うん、ええよ。それで航生くんが興奮するなら試してみよか?」 躊躇う航生くんの腕を掴みそのまま寝室へと向かう。 戸惑いとか不快感が全然無いかって言うたら、正直ある。 別に航生くんがおってくれたら欲求不満なんてもんには無縁やし、なんで十分満足してんのにオナニーなんかせなあかんねん。 それも、シコるんやなくてケツを自分で弄るとか...そんなん考えた事もあれへん。 それでもそんな俺の姿を航生くんが『見たい』って思うなら、そこに『拒否』なんて言葉は無い。 それに興奮して喜んでくれるならそれでエエ。 股でもケツでもなんぼでも開く。 ベッドの端に航生くんを座らせると俺は一人マットの上に上がり、パジャマ代わりのTシャツと短パン、それにボクサーパンツまで全部を脱ぎ捨てた。 握ったバイブに一応ゴムを被せ、それにローションを垂らす。 間にクッション代わりの枕を挟んで背中をベッドヘッドへと預けると、俺は航生くんに向かって大きく足を開いた。 「ごめん、航生くん...ちょっと入れるとこだけやってもうてかめへん? そしたらあとは、俺が自分でエエとこに当たるようにするから」 「あ、あの...ほんとにいいんですか?」 「うん、ええってば。俺のイヤらしい姿見て興奮してくれるんやったらナンボでも」 航生くんにバイブを握らせると、一度ゴクンて唾を飲み込みその先端をあてがってきた。 慣らしもなんもしてへんけど、ローションのおかげかこれくらいの太さやったら大して苦もなく入ってくる。 奥まで入れんと、ちょうど中間くらいの場所で航生くんの手を止めた。 「そしたら見といてな?」 コントローラー部分を航生くんの手の中から奪い、俺は自分でそれを軽く握った。 二つ付いてるスイッチの片方を入れてみる。 「......っん...」 途端に粘膜全体が細かく振動を始めた。 中がすぐにジーンて痺れてくる。 航生くんとのセックスみたいに精神的な高揚感はゼロやけど、無機質な振動は容赦なく体内の温度を上げた。 自然と唇が開き、平静を保とうとするみたいに必死にゆったりとした呼吸を意識する。 なんか、俺を見てる航生くんの眉間に皺が寄った。 あれ...もしかして...思ってた以上に俺の反応が悪いからって...冷めてる? こんな情けない姿を晒してんねんから、どうせなら航生くんをちゃんと興奮させたい。 緩いまま止まない振動を堪えながら、俺はもう一つのスイッチを入れた。 途端に中に埋め込まれたシリコンの塊が大きくうねり始める。 それを何度か小さく入れたり出したりしながら、俺は自分にとっての 一番イイ場所へと押し当てた。 ビンッといきなり足の先まで強い痺れが走る。 どうやら僅かな湾曲のおかげで、振動もうねりもピンポイントでそこに当たってるらしい。 航生くんにしてもらう方が気持ちエエ...そんなん当たり前やのに、わかってんのに...気持ちなんか全然入れへんただの機械に、悲しいくらい一気に追い上げられていく。 チンチンはプックリ真っ赤に腫れ上がり、先からはトロトロと蜜が滴り始めた。 足は思わず突っ張るのに、背中は無意識に丸まって快感を中に閉じ込めようとしてしまう。 体を丸めれば、中を押し込むようなうねりを更に強く感じる。 ケツから出ている部分を小さく揺らすみたいに動かしながら、俺はもっともっと自分を追い上げた。 ハッハッと走り回った後の犬みたいな息を繰り返す。 自分の体は、結局自分が一番わかってるって事なんか...いざポイントに当たってしまえば、あとは無理矢理でも何でも、勝手にグングン快感は高まっていった。 「んっ...あぁ...っ...航生...くん...見てる? 見てくれて...る...?」 必死に訴える俺の声に、航生くんからの返答は無い。 ......なんや、やっぱり興奮させてあげられへんかったんか... そう思った途端、なんか急に虚しいなってきた。 もうさっさと終わらせてしまおうと振動のパワーを一気に最大まで上げる。 「あっ...ああっ...んふ...イく...航生くん...イく...ああっ...アカ......」 その時、いきなり俺の唇が手のひらで塞がれ、バイブを動かしてた手を押さえられた。 もう頂上の手前まできてたってのに...航生くん、なんで? 「もう、我慢の限界です」 怒ったようにも聞こえる声。 それが不安で、意味もわかれへんで体が震える。 「こんな事に興味持った俺が悪かったのはわかってます。でも...慎吾さんの中に、俺以外の物が入ってるってのが許せません。何より......」 航生くんの手のひらが俺の口許から離れ、代わりにそっと唇が合わせられた。 「俺以外が慎吾さんに『アカン』て言わせるのは聞いてられません」 「......ヤキモチみたいやん」 「ヤキモチですよ」 「こんなん...オモチャやで?」 「オモチャでもなんでも、俺より慎吾さんを気持ちよくさせる物があるのが嫌です」 「......航生くんより俺を気持ちようできるモンなんか...あるわけないやん...。そしたら早よ、航生くんの手で『アカン』て言わせて?」 俺が言うが早いか航生くんは乱暴にバイブを抜き去ると、そこに迷わず口を寄せてきた。 やっぱりオモチャなんかより、航生くんの全部が気持ちいい。 どうやら俺は、モニターとしては失格や。

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