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航生、緊張する
「へぇ、あの航生くんでも中折れなんかすんねんなぁ......」
「中折れなんてしてませんってば! ちゃんと話聞いててくださいよ!」
「中折れじゃなくて勃ち待ちだもんな。即勃ち・即入・即射の航生くんともあろう人が」
「めっずらしい事もあるもんだなぁ」
「まあ、中折れも勃ち待ちも大して変われへんけどね。結局こうして待ち合わせに遅れてんのは一緒やし」
「ほんとに悪かったと思ってますってばぁ。今日のここのお代は勿論俺が出しますし」
「おっしゃ。んじゃピンドンで乾杯な」
「はい、それは却下です」
「ま、別に奢ってもらうとかはいらないから心配すんな。んでもマジで今日どうした? 体調でも悪かった?」
「アレだろ、昨日ヤリ過ぎただけ」
「自分と一緒にしないでくださいね」
「せやで。昨日は撮影の事考えて、航生くんは一回しか出せへんかったし!」
「一回しかかよ! とりあえずやってんじゃねぇか」
「んで、慎吾は?」
「俺は今日休みやから、いっぱいしてもろうた~。いっつも気持ちエエんやけど、昨日もメッチャ良かったぁ」
「はいはい、ノロケノロケ。お腹いっぱいだっての」
「自分らもしょっちゅう言ってるでしょ!」
「ま、ヤリ過ぎってほどでもなさそうだし、そんだけ元気に充彦にじゃれてんだから体調の問題でも無いだろ? んじゃ、どうした?」
「いや、あ...あのですね...ちょっと緊張しちゃって......」
「緊張!? 別に緊張しなきゃいけないほど激しい絡みなんか無かっただろ。まあ、今日は相手役のせいであんまり雰囲気は良くなかったし、カメラマンも無駄に多かったけど」
「まさにそれでしょうよ!」
「別になんて事無いじゃん。普段とおんなじようにやってりゃいいだけなんだし」
「なんで今日に限ってそんなにカメラマン多かった?」
「あのですね...今日の相手役ってのが、あの少し前までグラビアに出まくってた『遠山あかり』だったんです。今回すごいギャラで本番やるってんで、まだ情報規制入ってますけど解禁以降の宣伝用に週刊誌と情報誌のカメラ入ってたんです」
「へえ、擬似じゃなくてガチ本番だったんだ? んでカメラの台数に緊張したのか?」
「いや、カメラとかの問題じゃなくて...だって、『遠山あかり』ですよ!? あの『あかりん』なんですよ!? 緊張しないわけないじゃないですか!」
「そうなの? 勇輝、緊張した?」
「いや、緊張はしないけどとりあえずムカついた。自分が相手役に俺ら指名したくせに、アレをしろコレは嫌ってさぁ......」
「勇輝さん、もしかしてあかりんを知らないとか?」
「知ってるよ。超ロリ顔にデカ乳で、結構エグいグラビアやってた子だろ? ま、あのオッパイが偽物だったってのはわかって良かったな」
「偽物...なんですか?」
「あれ? お前気付いてなかったの? 脇の下のここんとこ、両方小さい窪みがあっただろうよ。あれはそういう事。つか、横になった時の不自然さとかでわかんないか?」
「あのオッパイ、偽物...偽物...あのマシュマロオッパイが......」
「充彦、マシュマロオッパイって?」
「そう呼ばれてたんだよ。水着に入りきらないマシュマロオッパイって」
「ふ~ん...しかしあの偽乳にそんなにショック受けてるって事は...さてはお前、あのオッパイに挟まれてるとことか想像した事あるだろ?」
「あ、なるほどね。昔自分がオカズにしてた人が相手役だったから変に気合い入りすぎて空回りしたわけか?」
「オ、オカズって......」
「したんだろ?」
「あの柔らかそうなオッパイに挟んでもらってズコズコしてるとこ、想像したんだろ?」
「......し、しましたよ! べっ、別に普通じゃないですか! あれだけ見事なオッパイがあれば、誰だってそれくらいの想像するでしょうが!」
「俺、別にオッパイ星人じゃないし~」
「俺なんて、マスかいたこと無いし~」
「てか航生、気づけ。今のお前の発言で、ものすんごい落ち込んでる人間いるぞ」
「航生くんはオッパイが好き...オッパイが...航生くんは大きなオッパイが...好き......」
「わーーーっ! ち、違いますよ! ほんとに違いますからね! お、俺は別にオッパイ星人とかじゃなくて、ほら、思春期ですから! オッパイって響きだけでイヤらしくてアソコ大きくなっちゃうような......」
「俺、オッパイ興味無いし......」
「あ~あ、墓穴だなぁ」
「慎吾は元々ゲイだっての」
「いや、そうじゃなくて...だからね、えっと...慎吾さんに会うまではオッパイ星人でした、ごめんなさい」
「俺な、オッパイ無いねん」
「わかってますよ!」
「シリコンも入れたないし......」
「だから、別にそんな事一言も......」
「パイズリはできへんから、代わりにタマズリで我慢してくれる? 挟んだまんまペロペロはしてあげられへんけど、その分いっぱいいっぱい気持ちようにしたげるように頑張るし」
「......今の慎吾さんの言葉だけで、俺勃ちました。慎吾さんが相手だと勃ち待ちなんていらないですね。今すぐにでも慎吾さんを可愛がってあげたくなります」
「俺も...なんか航生くんにズリズリしてるとこ想像しただけで......」
「おら、そこの半勃ちカップル! 俺らもうちょっと飲んでいくから、お前らさっさと帰れ」
「あ、いやでも、ここの支払い......」
「お前に払わせるほど落ちぶれてないっての。ほら、帰った帰った」
「ったく...あいつら、なんでも発情期のきっかけになんのな」
「いやあ、若いですなぁ。そういやさ、勇輝のオカズって誰だった? 好みの女の子の話とか聞いた事無かったけど」
「好みのタイプなんて考えた事も無かったし、そもそも仕事以外でオナニーした事も無いもん。強いて言うなら、俺にとってはどこもかしこも充彦がタイプかな。心から欲情したのって、後にも先にも充彦しかいないし」
「......その発言、なかなか腰にくるわ」
「そう? 充彦は? 充彦の好みのタイプも聞いた事ない」
「俺? 付き合うのにもセックスするのにもオカズにするのにも、別にタイプは無かったよ。オッパイと穴だけあればいい...的な?」
「うわあ出たよ、クズ発言」
「仕方ないだろ、恋愛に本気になるなんて馬鹿馬鹿しいと思ってたんだし。俺が明らかに意識してオカズにしてたのは...勇輝だけ。勇輝に会ってからはお前でしか抜いてないし、勇輝と付き合ってからはお前にしか入れてない。これから先もずっとだけどな」
「ふふっ...確かに腰にくるね、そういう殺し文句」
「かなり下品だけどな」
「でも、ストレートで好きだよ」
「......帰ろうか。悪いけど俺も半勃ち」
「じゃあ、俺がすぐにビンビンにしたげる」
遠回しな綺麗な言葉もいいけれど、彼らには下品でも嘘の無い真っ直ぐな言葉こそが胸と腰を打つ...そんな日常。
慎吾の青春時代の妄想の恋人が実はユグドラシルのユーキと聞き航生が打ちひしがれるのは、また後日のお話。
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