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いつか訪れる未来(勇輝&慎吾)

 かなり遅刻してますが、七夕のお話です。  セリフだけの短いお話ですので、どうぞサラッとお読みください ********** 「ただいま...って、おぉっ、帰ってたのか?」 「帰ってたのちゃうで~。急ぎで買い付けしてこいって日本追い出しといて、俺がダッシュで話まとめて言われた期日までに帰ってきたら今度は自分が日本におれへんてどういう事?」 「悪い悪い。ちょっとうちが直接輸入契約してたチョコレートメーカーにトラブルがあって。フェアトレードを謳っといて、不法労働でコスト下げたカカオ使ってたってこないだわかったんだよ。急ぎで他のメーカー当たってたんだけどこれがさぁ、なかなか日本の手垢の付いてないメーカーって少ないんだよなぁ...ちょっと今回はまいったわ」 「あれ? こないだコーヒーでもそんなん言うてなかった?」 「あれは代理店変えればいいだけの話だったから日本国内でカタのついたし。まあでも、結局は行って良かったけどね...ついでにピスタチオとか白いちじくなんかの中東との取引も仲介してくれるって話になったから。チョコレート自体の原価は上がったけど、トータルで見たら損の無い契約になった」 「ふ~ん...俺はその辺、ようわかれへんからなぁ。そしたら社長、買い付けの報告しよか?」 「社長はやめろよ、なんか気持ち悪いし...それにわざわざ報告してもらわなくても、お前に任してたらセンスの良い物見つけてきてるのわかってるから」 「センスええのは当たり前。そこちゃうねん、値段の交渉の問題で向こうからちょっと条件出されたから、勇輝くんに判断してもらいたいねんて」 「......はいはい、なるほどね。んじゃとりあえずモノ見せて」 「うん、これ。『アニバーサリー・コンフィチュール』で内容量200ml用に3種類。結婚と出産と誕生日のイメージで...んで、一応ユーロ立てで契約したいって話はしてきた。送料分込みで、一個あたり2.5ユーロ計算なんやけど」 「うん、デザインはいいねぇ...特にこの天使のレリーフのボトルとか、すごい可愛い。結構細工の細かさとか違うけど、全部原価同じでいいって?」 「うん、同じにしてくれるように交渉はしてきたよ」 「てことは...こりゃ、だいぶ数吹っ掛けられたな? 一回の発注単位は?」 「さすが、バレバレやな...1コンテナに40個入りのケースが10個入ってて、3種類合わせて1回の注文で最低20コンテナやって。な? 俺だけの判断で決められへん量やろ?」 「バーカ、だから俺は常々店の商品の売上とか頭に入れとけって言ってんのに...8000だろ? コンフィチュールでそれくらいの数、今のうちの会社なら問題無いっての。それくらいお前の裁量で契約してくれば良かったのに」 「あ、そうなんや...ごめん...俺やっぱり数字苦手やねん。ほんまに役立たずでごめん......」 「はぁ...何が役立たずだっての。お前の企画で立ち上げたステーショナリーカフェも当たってんだし、航生んとこに置いてる絵本もセンスがいいってお母さん達にすごい好評なんだろ。いい加減、自分のセンスと力量に自信持て。俺はお前に期待してる」 「ありがとね...うん、ほんまごめん...そしたら俺、すぐイタリア戻って契約してくるわ」 「いや、もうそれはいいよ。通訳付けるのもアレだし、本社から契約に強い奴に直接行ってもらうわ。イタリア語ができるのは...高橋さんだっけな? だから、慎吾はすぐにこの紙見本とボトル持って充彦のとこ行ってきて。んで、新しいギフトボックスのデザインを詰めてよ」 「うん、わかった。今から店行っても大丈夫なん?」 「今日は店出ないで、部屋で新しいムースの試作してる」 「そしたらみっちゃんと打ち合わせして、その足で大阪の新店の様子見に......」 「いや、今日はそのままうちにいて。俺、このあとの会議終わったら真っ直ぐ帰るし、航生も夕方にはうちに来る事になってるから」 「ん? 何? なんかあんの?」 「あるよ。今日、何の日?」 「えーっと.............あ、もしかして七夕? まさか、今日に間に合うようにって俺に期日切ったん? 嘘やろ!? たかがそんな事で?」 「たかがって言わないの。その為に俺もそれに間に合うように帰ってきたんだから。今日は充彦がちゃんとディナーの準備してくれてるから」 「そっか...今年は忙しいて笹飾りの準備はできへんかったね...しゃあないけど」 「これ以上お願いごとあんの? 贅沢だなぁ...」 「そら、お願いごとはあるよ~。まだまだ叶ってない夢もあるし」 「ふーん...お前去年はなんて短冊に書いた? 覚えてる?」 「当たり前やん。俺にとっての一番のお願いごとやもん、一番の夢やもん。『いつか4人みんなで大きい家に住めますように』...って」 「はい、じゃあ一番の夢は叶ったな。だから今年はお願いごと諦めましょう。あんまり欲張りすぎたら足下掬われるし」 「......どういう事?」 「あ、航生内緒にしてたんだな...実はいい土地見つけたんで、こないだ航生に契約行かせてきたんだよね。ちょっと会社からは離れるけど、わりといい場所だぞ。300平米近くあるから結構大きな上物建てられるし」 「......うそ...うそやん...えっ、ほんまなん!?」 「ほんまでございます。充彦と航生の工房をメインにしてもらわないといけないけど、上物のデザインと間取りは慎吾に任せるからよろしくな。これについては期日切るつもり無いし、お前が納得いくまで考えていいよ。どう? まだ今年も短冊必要?」 「ふふっ、確かにこれ以上望んだらバチ当たるわな。今年はディナー楽しむだけにして、お願いは諦めとくわ」 「そーいう事。さてと...んじゃ俺、会議行ってくる。ギフトボックスの件、よろしくな」 「わかった。みっちゃんと待ってるから、早よ帰ってきてね」 それはきっと、いつか訪れる未来......

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