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第48話

「あ〜〜〜〜〜………死ぬ………」 絶賛、二日酔い。 ─── 秀一は酒の失敗は少ない方だ。 接待で無理に飲まされてグロッキーになった経験が数回ある程度。二日酔いの経験もほとんどない。 だからこそ、堪える。 バーでママに止められる程飲んだにも関わらず、帰ってからもコンビニで調達した安酒を煽り家のトイレでリバースして死んだように寝た。目が覚めてから数時間はベッドから起きられずにゴロゴロして、今漸くフラフラしながら出てきたところだ。 吐き気も酷けりゃ頭痛も酷い。とりあえず胃に入れるなにかと吐き気止めだけ手に入れて帰って寝よう。 「あ〜桜井さんが作ってくれた豚汁美味かったなぁ…今まさに食いたい…あ〜〜〜カフェオレ飲みてーな、買ってくか…」 真っ青な顔でよろよろしながらコンビニを徘徊する秀一に、すれ違った店員がサッと顔を背けた。最近こんなんばっかりだ。俺は不審者か。ツーンの鼻の奥が痛くなったのは気のせいじゃない。 半泣きで会計を済ませ、ドッと疲れを感じながら店を出ようとした時。 どん、とすれ違いざまに人とぶつかった。 「っ〜〜〜…すいませ…え?」 ぶつかった衝撃で頭蓋骨が割れるような痛みに襲われながら顔を上げると、恋しくて堪らない人が驚いたように口を半開きにしていた。 「さっ…桜井さ…!」 「…勅使河原さん。」 ちょっと、これ、どういうこと。ちょっと遭遇率高くないですか。嬉しいけど。嬉しいけど。今日も綺麗です。 二日酔いで鈍くなった頭はすぐにパンクして、秀一はパクパクとまるで鯉のように口を開閉するしかない。桜井も驚いたような困ったような表情でジッと秀一を見つめている。 どうしよう、嬉しいけど、でも。 「…すいません!!」 「あ、待っ…」 沈黙に耐え切れず、秀一はその場から逃げ出した。 こう見えて秀一は中学時代サッカー部のエースだった。部員総数20人足らずの弱小部だったけど一応エースだったのだ。脚はそれなりに速いし瞬発力だって自信が─ 「待てって!」 「ぐえっ…」 「あ、やべ締まった…」 あったのだが、それももう10年前の話。生活に疲れた社畜は思うように体が動かず、ましてや二日酔いでふらふらの脚は走るというよりもよろけるしか出来なかった。

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