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第65話
秀一の失礼極まりない感想に、桜井が若干項垂れた。
「そう、くだらねーの。あんま知られたくなかった…」
くだらない。
実にくだらない。
たった3日間のお付き合いを『付き合ってたもん』とわざわざ報告してくる望月も、それを真に受けて舞い上がったり振り回されたり嫉妬に駆られたりした自分も。
秀一は急にバカらしくなって、へなへなとその場に座り込んだ。
「…んだよそれぇ…」
「いやまさか剛がそんなこと言ってるなんて思ってなかったし…」
苦笑いする桜井の笑顔が急に眩しく見える。やっぱり綺麗で可愛くて天使だ。現金なものだが気分が晴れるだけで桜井の魅力が3割増して見える。
が、すぐにその気分も翳りを見せた。
「…でも、望月さんは今も桜井さんのこと好きなんじゃないの?そんな感じしたけど。」
デパートで出会した時の発言を思い出せば、そう捉えられる。
今秀一と付き合っているのだから桜井にその気はないのだろうが、もし望月が本気でアプローチをかけたらどうだろう。あれほどのイケメンで財力もありそうな望月と張り合って敵う自信は全くなかった。
どこまでも望月の存在が引っかかる様子の秀一に、桜井は眉間に皺を寄せて思い切り嫌そうな顔をした。
「え?ないない!絶対ない!」
そのあまりの力強い否定に、カクッと拍子抜け。
ちょっと下がってきていた眼鏡をクイッと直して、秀一は居直った。
「なんで言い切れるの?」
「鷹と鷲は仲良くなれないんだと。まさか俺を掘ろうとする奴がいるとはって頭抱えてたよ。」
「猛禽類…」
「失礼な奴だよなー。」
鷹だとか鷲だとか、もちろん知っているが。穏やかで優しい桜井しか知らないせいか、イマイチ想像がつかない。
ましてや望月みたいな高身長の黒髪オールバックが似合うイケメンを桜井さんみたいな細身の綺麗目な人が、とそこまで想像して、ハタと気付いた。
「あれ?待って、桜井さんタチ!?」
秀一はまさかその可能性を考えておらず、血の気が引いた。
が、すぐにそれは杞憂に終わった。
「ん〜…まぁあいつと俺なら俺がネコなんだろうけど、なんだろ?俺何事もアイツの下にはなりたくないんだよね。」
「なにそれ…」
というよくわからない持論によって。
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