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第71話

透明のケースに入った真っ白なそれらは何のディスクなのかさっぱりわからない。 ただDVD-Rと薄く印刷されているからDVDと分かるだけで、何かの映像なんだろうと想像がつくだけ。 「奏真くん、これ何?」 「俺が中学生の時のなんかのコンクールのDVD。」 「えっ!?見たい!!」 「制服じゃないけど。何弾いてんのかも覚えてないし。」 「いい!全然いい!見たい!」 「いいよ。」 優しく微笑んだ桜井はそのまま別の客の元へ。その背中から再びDVDに視線を落とすと、途端にその真っ白なディスクが輝いて見えた。 さっき、中学時代の話をしたから持ってきてくれたのだろう。優しい。別に制服姿の桜井が見たかったわけじゃない。いや嘘だ本当は見たい。が、制服じゃないとわかってもそれ以上にこのDVDは魅力的だ。 中学生の奏真くん。 しかもコンクールの映像なんて、本気も本気の演奏に違いない。 (お宝映像………ッ!!) これは、これは家に帰ったら早速見なければ。本当は今すぐにでも見たいけど、本人が目の前にいるのにDVDのためにそそくさ帰るなんてもったいないことはできない。しかも一週間に一度しか会えないのにだ。ああでも気になる。気になりすぎる。暇つぶしに本じゃなくて会社のパソコンを持って来れば良かった─── と、思ってハタと気が付いた。 秀一は自宅にDVDプレイヤーなるものがない。それどころかテレビもない。 パソコンは仕事で使っている小型のノートパソコンだけで、止むを得ず家に仕事を持ち帰る羽目になった時だけお供として持って帰ってくる。もっともそんなことには早々ならないようにしているが。 つまるところ。 「見れねぇ…!!」 そんなバカな。 秀一は雷に打たれたような衝撃を受けその場にひれ伏した。

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