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第99話

キョトンとしてしまった奏真は秀一につられて体を起こし、一緒になって正座した。ベッドの上で正座で向かい合う奇妙な状況で秀一はごくっと生唾を飲み、口を開いた。 「ヒメ…今朝のアイツと、別れる時にね。その、…下手くそって、言われて。」 奏真の顔が見られない。 こんな話をして、やっぱり嫌だと思われないかが心配だった。誰だって下手くそとはしたくないだろう。ましてや男同士で、受け身である奏真の方には何倍も負担がかかるのだ。 それ以上何も言えない秀一は、膝の上でギュウッと強く拳を握った。掌に爪が食い込むほどに握り締められたその拳を、ふわりと温かい何かが包む。 奏真の、手。 温かくて、細いのにしっかりと筋肉がついた、嘘のように美しい旋律を奏でる手だ。 「奏…」 「じゃ、俺が上やるか。」 「やめて!?」 「ブッ…嘘だよ。タチなんだろ?」 「ハイ…」 そのほんの二言三言のやりとりですっかりいつものペースだった。顔の強張りが解けた秀一に、奏真がクスッと小さく笑いを零す。釣られて秀一も笑ってしまって、奏真はコツンと秀一の額を小突いた。 「気にすんな。相性もあるし。快楽目的でもないだろ。」 女神か…ッ!!! 本日二度目の感無量。今回も秀一の涙腺は呆気なく崩壊して、ギョッとした奏真 もすぐに大笑い。 腹を抱えて笑った奏真は号泣の秀一の眼鏡をそっと外し、目尻に溜まった涙を親指で優しく拭ってそこにキスした。 「奏真くん、かっこいい。」 「なんだそれ。」 ふふ、と二人で小さく笑い合って、秀一は今度こそ奏真に衝撃がかからないように注意してゆっくりと奏真の身体を横たえた。 背に腕を回してくれた奏真にキスしながら、秀一を悶々とさせた少し大きめのタンクトップの中に手を忍ばせる。見た目通りの滑らかな感触にジワジワと興奮を覚え、秀一は欲望に抗わず手を上へ滑らせてぽつりと実る小さな粒に触れた。 反応は、ない。 焦らすように転がしてみても、少し強めにきゅっと摘んでみても、特に反応はない。 「…奏真くん、もしかしてここ感じない人?」 「………なんかごめん。」 「あ、いや、ううん…」 可愛い反応を少なからず期待した秀一はちょっぴり残念な気持ちになりながら、少し盛り下がってしまったムードをなんとかすべく自分が来ていたTシャツを脱ぎ捨てた。

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