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第102話

どうしよう…!!! くったりと力を抜いて秀一の腕の中で大人しく息を整えている奏真の肩を抱きながら、秀一は額からダラダラと冷や汗を流した。 ここで終わりにすることももちろんできる。ゲイカップルの中には本番をしないカップルも多く存在するし、なんら不自然ではない。 不自然ではないのだけど。 やはり本音を言えば最後までしたい。奏真に気付かれていないのが幸いだが、出したばかりのはずの息子はすでに元気である。 が、しかし。 きっと奏真は後ろの準備なんてしていないだろうし、今からそれをしてきてもらうのも白ける。洗ってさしあげるという選択肢は大いにありだが、「後ろ洗ってあげるよ!」なんて伝えたら奏真のことだから爆笑しそうだ。かといってそのままというのも、秀一がよくても奏真は自分のベッドだし。 そういえばローションもゴムもない。もはや絶望的である。 非常に残念だが仕方ない。今日のところは諦めよう。 鎮まらない息子を宥めるように深く呼吸すると、平常心を装った精一杯の笑顔を顔面に貼り付けた。 「奏真くん、平気?」 「ん…」 サラサラの髪に指を通しながら優しく尋ねると、ぽやんとした返事。 秀一の肩にもたれていた奏真はやがてゆっくりと身体を起こし、硬直した。体制的に当たり前だが、まず目に入るのは秀一の股間。 そこで主張する元気な息子だ。 「………若いな。」 「4つしか違わないよ…」 「4つってでかいよな…俺来年30だしな…」 「え、なんか凹んでる?なんで!?」 「うるさい微妙な年頃なんだよ!」 「あいたッ!」 結構な力でベシッと肩を叩いて、奏真はプイッとそっぽを向いてしまった。 拗ねた子どものようでなんだか可愛い、とほんわかしていると、奏真はベッドヘッドをごそごそと漁っている。と思ったら、ポイポイとなにかをこちらに投げてよこした。 うまくそれをキャッチして、なんだろうと手の中を見れば。 ローションと、ゴム。 「えっ…これ、え、新品じゃん!」 「だってこの間買ったやつだし。」 「ちょっ、こういうの俺が用意するべき立場…っていうか当分誘われないと思ったってさっき!」 「だって先週拒否ったろ。」 「申し訳ありませんでした…!!」 「本当にな。」 低い声でそんな風に言うものだから、さっきとは違う冷や汗をかいてしまう。布団に額を擦り付ける勢いで謝る秀一に、奏真は満足気に微笑んでいる。目が爛々と輝いていて、あ、遊ばれていると秀一はすぐに気がついた。

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