108 / 163
第103話
顔を上げた秀一に、奏真は頬を染めて視線を明後日の方向に逃がしてボソッと呟いた。
「仕事終わって一番に風呂入って準備していつそうなってもいいようにしてたのに、いつまでたってもそう言う雰囲気にならねーし、なったと思ったら拒否られるし…いや、ほんとマジで凹んだし、冗談抜きで体臭も口臭も気にしたよ…」
「ご、ごめ…!」
「だから!」
ぐいっと手を引かれて、触れるだけのキス。
ふにょんとした唇はしっとりと濡れていた。
「しよう。…下手くそなんて、忘れろ。」
至近距離で囁かれた言葉がじぃんと胸の奥に響いて、秀一の恐怖心を包み込んで消していく。
再び重なった唇が銀色の糸を引いて離れると視線が合って、その視線の中に確かな愛情を見出した。
「奏真くん、好き。」
自然と溢れてきた言葉を囁きながらそっと押し倒すと、奏真の身体がひくんと僅かな反応を示した。
うなじや耳を愛撫しながら片手を下へ滑らせ、力を取り戻し始めた奏真自身に触れる。もう迷いはなかった。堪えきれなかった喘ぎを漏らして強烈な色気を放つ奏真にゾクゾクしながら、うしろの小さな蕾に触れた。
そこは存外柔らかかった。
誘われないと思ったと言いながら今日も準備してくれていたのかと思うと、申し訳なさと愛しさがせめぎ合って秀一の緩い涙腺が刺激された。
けれど今ここで泣いたら台無しだ。満足させてあげることが出来るかはわからないが、せめて精一杯丁寧に大切にしようと心に誓って、ローションをたっぷり垂らしゆっくりと指を一本差し込んだ。
「ッ…」
「痛い?」
「いや…」
顔をしかめた奏真を襲っているのは、恐らく異物感。本来の用途と真逆のことを、それも他人 がしているのだから強烈な違和感に襲われるのは当然のことで、秀一はこの違和感にどうしても耐えられずタチしか出来ない。
自分が耐えられないことを相手に強いている、というのがなんとも申し訳なくて、せめてめいっぱい気持ちよくなって欲しくて秀一は中を丁寧に擦りながら徐々にそこを拓いていく。奏真があらかじめ準備していてくれたお陰で、二本目の指も難なく飲み込み、三本目の指も然程苦労せずに飲み込んだ。
ともだちにシェアしよう!