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Premier Ensemble/2

しばらくすると奏真は店仕舞いを終えて居住スペースである2階に上がって来た。いつも通り直ぐに風呂に行くのかと思えば、フェイスタオルを濡らして袋に入れると無造作にレンジに突っ込み、ほんの30秒ほど温めた簡易の蒸しタオルを作って秀一に手渡してくれる。思いのほか熱くて秀一はワタワタとタオルを宙に泳がせた。 「フハッ!熱いから気をつけて。」 「早く言って…」 「風呂入ってくるから、肩温めて待ってな。テレビ…は肩凝るか。」 奏真はリビングの大半を占めている立派なオーディオに電源を入れると、寝室から着替えと一緒に一枚のCDを持ってきてそれをセットしてサッサと風呂場に消えた。 その背中を見送って手にした蒸しタオルを肩に当てると、凝り固まった肩の筋肉にじわりと熱が染み込んで自然と筋肉が弛緩していく。ほうと一息つくと、弛緩した肩から首へ、そして頭部へと血が巡っていくのを感じた。 (幸せ…) 滞った血流のせいで冷え切った身体がじわじわと温まっていくのがなんとも心地いい。思わず目を閉じるとこのまま眠ってしまいそうだ。 ころころと転がるような明快で美しい旋律が聴こえてくる。奏真がセットしていったCDだろうが、彼にしては珍しい選曲だった。と、語れるほど秀一はクラシックに詳しくないが、奏真がプライベートで選ぶ曲はカフェで聴くような穏やかで優しい曲よりも、大ホールで大勢の人を前に演奏するような華々しい曲が多かったので、きっとそういう雰囲気の曲が好きなのだろうと思っていた。 ソファの背凭れに頭を預けてしまうと、いよいよ眠気が襲って来てあわやというその時、CDの音に紛れて聞こえていたシャワーの音が止まって浴室の扉が開く音がした。 「おかえりぃ…」 ソファに全身を預けただらしない格好で完全にリラックスモードの秀一に、奏真はくつくつと笑いながら麦茶をグイッと一気飲みして、秀一の隣に腰掛けた。 「お寛ぎのところ悪いんだけどそれじゃ肩揉んでやれないな。」 「うぅん…うん、よっ…こいせ…」 「ジジイか。」 「もうジジイだよ…あちこち痛いもん…」 「あほう。俺より4つも若いだろ。」 コツンと額を叩いた指先に力はほとんど込められておらず、秀一はへらりと笑って誤魔化すとソファから降りて地べたに胡座をかいた。その秀一を奏真が跨ぐようにソファに座る。冬が見え隠れする季節になったというのに相変わらず風呂上がりは短パンの奏真の剥き出しの細く白い足に挟まれて、秀一はちょっとドキドキした。

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