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Premier Ensemble/6

それを見て満足そうに微笑んだ奏真は、秀一の背後に回り、秀一を抱きかかえるような体勢で左手を伸ばして鍵盤に手を置く。 「覚えた?ゆっくりでいいから、いくぞ、せーの、」 「ちょっ、わ、わっ…!」 掛け声と同時に、恐らくわざとスッと音を立てて息を吸った奏真の呼吸に自然と のせられて、秀一は覚えたばかりのたどたどしい旋律を奏で始めた。と同時に、奏真が伴奏をつけてくれる。 ほんの数秒。 素人丸出しの拙いメロディーに、しっかりと合わせてくれたハーモニー。それは確かに秀一と奏真のアンサンブルだった。 「ほら、出来た。」 開いた口が塞がらない秀一に、奏真は無邪気にくしゃっと微笑んだ。 「す、すげー…!奏真くんすげー!」 「なんでだよ。なんも凄いことにしてねーよ。」 「俺ピアノなんて初めて触ったのに…!」 笑いを堪えきれていない奏真がまるで魔法使いのように見えて、秀一は慣れない運動をさせられてじんわり暖かくなった自分の指先をキラキラした目で見つめた。 奏真に出会うまで音楽には興味もなく、楽器は授業で使ったリコーダーのみ。奏真と出会って漸く音楽に興味を持ってあれこれと聴くようになった秀一は、奏真と一緒に初めて自分で奏でた音を何度も頭の中で鳴らす。 奏真が奏でるキラキラした華々しい音とは全然違ったけれど、それは秀一に大きな自信を与えた。 「すげー…メロディーになった…」 「よし、これを機に秀一もピアノやろう。目標は俺と連弾で。」 「レンダン?」 「1台のピアノを二人で弾くやつ。」 「ちょ、目標設定が高すぎる。」 「ワンレッスン30分でキス一回、1時間でセックス1回でどう?」 「3時間でお願いします!!」 「え…嫌かも…」 「嫌なのッ!?」 ガン!と古典的なリアクションをしてしまった秀一を奏真はまた笑って、未だピアノ椅子に座ったままの秀一の顎を、秀一が一生かけても出せないだろうキラキラした音を奏でる指先ですくい上げてチュッと触れるだけのキスをした。 「ピアノって腕と肩使うから肩凝りしねーし、気が向いたらちょっとやってみれば。このピアノ好きに触っていいし。」 ニッと悪戯に微笑んだ奏真が、それはもうめちゃくちゃ可愛くて、けれどやっていることはあまりにカッコよくて、秀一はどうしていいかわからずカーッと熱くなった顔を片手で覆い隠すしかなかったのだった。

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