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第3話

「美人が咲くんですよね!胸とかおっきな美人さんですか?それともちっちゃい?」 「ふはっ!」 褐色の男性の言葉に、龍二は腹を抱えて笑った。一緒に来ていた友達もテーブルをバンバン叩きながら笑っている。男性は、何故龍二達が笑っているのか分からないのだろう。キョトンとした表情で、龍二達を見ている。 「何を勘違いしてるのか知らねーけど、美人は咲かねぇよ。月下美人。美人って付くけど、人じゃなくて花が咲くんだ」 「花?花なのに美人?ん?なんでですか?」 「さぁ。それは俺もよく知らない」 「ふむ。やっぱり、日本語は難しい」 月下美人。美人が付くけど、咲くのは人じゃないと理解したらしい。日本語は難しいと唸りながら、パクリと魚の煮付けを食べていた。 「…………何なら、見に来るか?今日花開くかどうかわかんねーけど、見てみたいならいいぜ」 気づけば、そう誘っていた。全く知らない男だ。今日初めて出会った、謎の男。話してる感じだと、日本人では無さそうな男。 龍二は、友達ですら簡単には家に招かない男だ。今一緒に飲んでいる友達は、家に招かれる数少ない友達の1人。そんな龍二が今日出会ったばかりの男を家に誘っているから、友達は口をあんぐり開けて驚いている。 誘った龍二本人も、内心自分の行動に驚いていた。意味が分からない。自分でも、全然理解が出来ない。 でも。 「どう?来るか?俺の家に」 どうしても来てほしい。今日咲くかどうかは分からないが、自分の育てている月下美人を見てほしい。 どんな反応をするんだろうか。夜にしか咲かない花を見て、この男は一体どんな表情を見せてくれる? そんな男の表情を、見てみたいと思ったのだ。 「いいんですか?ボク、げか、美人?ですかね。見てみたいです!」 そう言って男が笑った。 キラキラと輝く笑顔は、まるで夜空に輝く月のようで。 「いいよ」 月のように輝く笑顔を、独り占めしたいと思った。

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