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第4話
「何か悪いな。奢ってもらって」
「いいんです!ボク、お金ならいっぱいです。それに、げっきゃ美人?見せてもらうから、そのお礼です!日本人は、お礼必ずします」
「ありがと。それと、げっきゃじゃなくて月下。月下美人な。言える?」
「…………日本語、難しいです」
男と2人、龍二の家に向かって歩いて帰っていた。タクシーを呼ぼうとしたが、中々捕まらなかった。歩いて帰れない距離ではなかったので、仕方なく歩いて帰っていたのだ。
龍二は歩いて帰るのは面倒と思っていたが、男はそうでもないらしい。キョロキョロと周りを見回しながら、楽しそうに笑っている。
「今さらだけどさ、名前何て言うの?俺は龍二。見た感じ日本人じゃないよな」
「そうです、龍二!相手に名前、聞く時は自分から。日本の文化!!そしてボクは、日本人じゃないです。よくわかりましたね」
すごい!と褒めちぎってくるので、龍二は照れ臭そうに笑った。
「それよりも、お前の名前は?俺はちゃんと名乗ったぞ」
「ボクの名前、リタナ。リタナです、龍二。リタって呼んで!」
「オッケー。じゃあリタって呼ぶな。俺のことは龍二でいいから」
さっきまであんなに歩いて帰るのが面倒だと感じていたのに。気づけば、リタナと同じように笑っていた。何度も通ったことのある道なのに、新しい発見がいくつもあった。
あれはなに?これはなに?リタナは、見たことないものすべてに興味を示して、何回も龍二に問いかける。龍二も分からないことがあれば、スマホでググってはリタナと一緒に学んだ。
「あー。なんだろ。リタと出会わなかったら、俺なんにも気づかなかったなぁ」
「なにがですか?」
「いろんなこと。この道、何回も通ったことがあるのに気づかなかったことばっかだった」
龍二の言葉に、リタナは一瞬考えるそぶりを見せたがすぐに笑顔になった。笑顔になったと思ったら、龍二の手を取り走り出す。
「ちょっ。リタ!」
「ボクもですよ、龍二!ボクも龍二と出会って、いっぱい、いっぱい日本のこと、知れました!」
本当に嬉しそうにリタナが言うから、龍二も嬉しくなって「俺も!」と叫ぶように言っていた。
「ちょっ、リタ、リタナ!ストップストップ!止まれ!!」
「はぇ?」
「俺の家、もうとっくのとっくに過ぎたんだけど。知らないんだから、先を走るな!止まれって言ったんだから、止まってくれよ!」
「………………ボク、ニホンゴワカリマセーン」
「リタナっ!」
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