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第5話

「ここが一応俺が住んでる場所」 人を上がらせるつもりがなかったため、朝の片付けをしていない状態の部屋。本当はそれを片付けてからいれたかったが、目を離した隙にリタナがいなくなりそうなので、上がらせることにした。 汚いと言われたらどうしようかと思ったのだが、それよりもっと酷い言葉がリタナの口から発せられる。 「ここが龍二の城。…………まるで、犬小屋のようですね」 たぶん友達とかが今の言葉を言ったのなら、龍二はマジギレしていただろう。すぐさま部屋から追い出していた。しかし、イラッとはしたものの、追い出そうとは思わなかった。 城じゃないし、犬小屋でもない。そうキレようと思ったが、リタナの純粋そうな顔を見ていたら怒る気も失せた。 リタナはたぶん本心で言っている。本心を言った人に、キレても仕方がない。それにリタナは、部屋に置いてある物を珍しそうに見ては楽しそうに笑っている。 「………ま、狭い場所だけど住めば都だぜ。掃除も狭いぶん楽だしな」 「そうじ?そうじとは、あれですか?ふきふきとか、パタパタとか」 「そう。一時間もあればキレイになるかな」 「一時間。ボクはその、そうじ?とやらはしたことはないので分かんないけど、龍二はすごいな」 「すごくねぇよ。それよりも、月下美人見せてやるよ」 リタナの手を引いて、龍二は居間に向かう。居間の窓。ベランダに通じる窓よりも遥かに小さい。 その窓のそばに棚を置いて、その上に月下美人を置いているのだ。 「どう?これが月下美人」 「むむっ!龍二、これのどこが美人なんですか?」 「だから、美人から一旦離れろ。まだ花を咲かせてないから」 「そうでした。でも、いつ開くか楽しみですね」 キラキラした瞳で、リタナはまだ花を咲かせていない月下美人を見つめていた。もしかしたら、月下美人が咲くまでここを離れないかもと思うぐらいに。 仕方ない。と、リタナにビールでも飲ませようと、龍二はビール2人分とつまみを取りに立ち上がった。

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