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閉めてから、初めて瞬きをした事に気付く。
心臓が、落ち着かない……
何故か龍次の裸体ばかりがチラつき、顔が熱くなってしまう。
しなやかな線の龍次の裸体は、何処か艶めかしく、けれど立派な男の肢体をしていて……
流石、花魁の風格だなと思い知らされる。
「……」
障子戸の向こうから聞こえる、龍次の声。
「ここ突かれると、感じるみてぇだな」
「……は……い、…感じ…ま……」
「うん、中がやっと解れて、緩んだり締まったりしてきたぜ」
「……ぁ、は…っ、」
微かな遊男の矯声。
「……」
身体検査なら、解る。
僕も売られてすぐ、龍次の部屋でやった。
……だけど……
あれは、明らかに違う。
新人の遊男に、床の手解きをしている様に見えた。
「……」
僕は龍次から、そんなもの受けていない。
あんな本番行為も、された事ない。
そもそも龍次の裸を、今まで見た事がない……
「……」
何だろう。
……モヤモヤする。
龍次にとってあの遊男は……
特別な存在、なのか……?
屏風で簡易的に空間を仕切っただけの、仄暗い大部屋。
所々置かれた行灯から、ぼんやりと光が漏れる。
あちこちで艶っぽい遊男の喘ぎ声と卑猥な音のする向こうで、夏祭りを楽しむ人達の騒がしい声が聞こえる。
「……随分と淫乱だな」
仰向けになり。立てた膝を左右に広げ、僕はその中心にある肉茎を、根元から先端に向かって執拗にしゃぶられていた。
「……あぁぁ…、っ!ん…ん、…っ!」
そうされながら……
後孔に二本の指を挿入され、ぐちゅぐちゅと引っ掻き回される。
……ダメ、だめ…っ……!
この状況を、慣れた遊男なら上手く受け流したり、感じずにやり過ごせたりするのだろう……
屏風の向こうから聞こえる喘ぎは、僕のとは違い何処か余裕のある艶っぽさを孕んでいる。
……なのに、僕は……
「……ゃ、やぁ……あぁあ…、っ!」
指が抜かれると、緩んだ其処が締まる前に、今度は舌先がぐいと差し込まれる。
「!!、あっ……ダメぇ…っ!……あぁあ!!」
脳天を突き抜けていく、強い刺激。
悲鳴にも似たそれが耳障りだったのか、口に丸めた手拭いを突っ込まれる。
「……ん、…ふ、ぅうっ!…ぅん…、っ!!」
遊男はイッてはいけない。
勿論、精液を出して汚してもいけない。
全身が熱くなり、ガクガクと下肢が震えて……
気がオカシクなる……
……助けて……
キュッと強く閉じた目の際から、涙がつっと零れる。
その時ふと思い出したのは
新人の遊男を組み敷いた、龍次の姿……
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