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第14話 デルタセッション 2
ー デルタ セッション 2 ー
川を渡る風がほんの少し涼しくなる頃、両方の川岸にはチラホラと夕涼みの客が芝生に腰を下ろす。
「 京都の夏の夜は川にでも来ないと耐えられないよな 」
「 エアコンない時代が考えられんよ 」
「 ジュンヤさんの浴衣姿、なんとも言えずにセクシ〜 」
合わせて冷やかすようにピューピューっと指笛もなる。
賑やかな笑い声、
セッションメンバーたちの交す言葉もだんだん興奮のせいか威勢良くなってくる。
俺の浴衣はスタッフやメンバーにも大好評で、俺も着てくりゃ良かったという声もあり、気分も登り調子に上がってきた。
舞台と照明が整って時計は6時を回ってる。
キーの調子を確かめながら喉を鳴らすと、面白いように良く唸る。
「 ジュンヤさん良いですね、良い音色出てる 」
とキナトに声をかけられ、
「 うん、これとの相性も良いし、良い感じだよ 」
眩しそうな俺を見るキナトに
「 キナトはどう?」
聞き返す。
「 ジュンヤさんに飽きられないよう頑張ります 」
とまともに返事を返すものだから、周りのみんなに大笑いされてる。よし!良い雰囲気だこのままセッション、いこうか!
時間になって周りを見回せば、人だかりが結構できている。その後ろの方に人より頭一つ飛び出した姿勢の良い姿を見つけた。
真名彦に軽く手を振ると笑いながら手を振り返す。
俺はメンバーを振り向き、
さあ行こうか!という代わりに腕を天に向かって振り上げる。浴衣の袖が完全に捲れたがそんなことは構うもんか。
マイクを持ったキナトがフェスの始まりを告げると前に陣取っている熱心な観客が一気に拍手と歓声で熱くなるのが伝わってきた。
こみ上げる興奮、川向こうまで届けよ。
ツュニジアの夜から始まるオープニング。
ドラムハイハットの連打が夕闇が訪れる鴨川デルタに透き通ってリズムに乗ったエアーを流し込む。
この曲のソロテナーサックス はベテランのやすとさん。
セッションの面白みはそれぞれ自由を思いっきり楽しむところ。俺もソロでアドリブ入れて二、三曲と思ってたけど、吹き出したら全曲いきそうだ。
このメンバーでの駆け引きはとってもインパクトがある。
正にサティスファクション!
遠慮は無用だ。
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