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第15話 デルタ セッション 3

ー デルタ セッション 3 ー 川の両側から聞こえてくる信号で止まる車の音、アクセルを踏んだのか少し唸りを上げたエンジンの音、 そして鴨川の両岸で涼む人たちの笑い声を遠くに聴きながら、 そして夜の帳を下ろした中洲の上で大好きなサックスを吹く。 二曲目の ーブルーボッサー が軽快に賑やかに始まると、乗りの良い観客はリズムを体で刻んでる。 次の演奏の前にメンバー紹介が入る。 全員のフルネームを覚えてない俺は観客と一緒になって紹介を聞き入ってると、 ひときわ大きな拍手が起こり、キナトに腕を引かれる。 「 ジュンヤさん 」 そっか、俺の紹介だったんだ。 「 青山ジュンヤです 」 なぜか名前を言っただけなのにどよめきが起きる。 曲のイントロを口拍子で取ると、 甘い歓声が広かった中で、 ーover and overー は切なく流れるような旋律から歯切れの良いリズムを楽しむ。 俺の好きな思い出の曲。 中学からアメリカに渡った時に一番に魅せられたのが連れて行ってもらったジャズフェスで聞いたサックスの音色だった。 この曲だった。 のめり込む、落とされては落とされては、這い上がるのにいつも一緒だった。 一人だと寂しくなる夜に夢中になって吹いた、この音、リズム。 でも今は寂しくない、俺はしっかり掴んだんだ。 吹きながら目を瞑れば、音が全身を満たして流れていく。 届けよ、あの人に。 今夜も俺はサックスに夢中。 曲が賑やかな旋律に変わっていく、中盤の選曲、夏の夜はスイングする約束。 観客のよく知ってる曲が並ぶ。 テイクファイブから観客と一緒に身体が揺れる揺れる。脚はリズムを踏んで、会場が一体になる。 俺たちのパフオーマンスもうなぎ登り乗りまくる。 お互いにめくばせし合い、吹いてない時は手拍子を取り、身体の動きが止まらない。

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