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第16話 デルタ セッション 4
ー デルタ セッション 4 ー
最後の
ーマイルストーンズー
トロンボーンとサックスと吹き上げながら、楽しいよ、本当に。
キーボードが加わってフィナーレはなんともゴージャスに!
浴衣の袖で汗を拭うと、
ジュンヤさん、はい、と困った顔でキナトがタオルをくれる。
「 何?ダメなの?」
「 当然です!」
鳴り止まない拍手の向こうに、全くだ、と俺を見ている真名彦が見えた。
最後の曲は、
ーOkinawaー
これはソプラノサックスを吹くキナトがどうしてもこの季節に吹きたいとリクエストした曲。
琉球音階とリズムがなんともエキゾチックなクリスポッターの曲だ。そしてそのあとのラストソングは、
俺がアレンジした曲。
ーOkinawaー
を日本の旋律に。
キナトのソプラノと俺のテナーサックスにビブラフォンを加えて夏の夜を愛しく思う気持ちを奏でた曲。
tryst 逢瀬。
最高の拍手をあの人から貰いたいよ、昨日から一晩で編曲したんだから、
本当に即興アレンジだと、キナトも驚いていたな。
でもーOkinawaーはもともと好きな曲、だから、頭の中にはいつもアレンジしてみたいって気があったんだ。
日本で再会するときに、吹こう、なんて、カッコつけて……
それなのにサックスを置いてきて、笑っちゃう。
でも、
本当になったけど。
そんな思いのままビブラフォンの旋律に聞き入る。
川の流れがサックスの音と共にビブラフォンの音を後から追いかけ、夏の夜のひと時の慕情が徐々にメロディー溢れてくる。
ソプラノとテナーのサックスの掛け合いが緻密になってくる。
音が螺旋して天に登る。
掌を延ばせば触れる、揺れる、出会う感応がここに降りてくる。
そして、今夜。
愛する人の元に戻るころ、真夏の暑さは身を潜め、流れる水に心を映して。
そんな思いを込めて吹いた曲に、川に集った多くの人が拍手する。
演奏が終わり、演奏者全員手を繋ぎその手を思いっきり掲げると、
汗ばむ身体がもっと熱くなる。
最後に深く一礼をすると、
拍手は大きな歓声に代わった。
フェスタは終わった。
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