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5. ルシアン

「はい。これ」 目の前に出されたものは、いつもの俺の好きなライムの乗った透明なお酒ではなくてオレンジ色の飲み物が俺の目の前に置かれた。 「あれ、俺頼んでないよ?」 「御堂院様から。『いつも同じの飲んでるだろうから、須川君からだって言ったら飲んでくれるかもしれないだろうから勧めてみてくれない?』って頼まれてね。俺もあまり気が進まなかったんだけど、たまには良いのかもなと思って。」 俺がパチパチと瞬きしている間に、それじゃ。って言って次のお客さんのところで楽しそうに話していた。 へぇ、御堂院さんが。 どんな味なんだろう。 初めて見るそのお酒を口に含んでみると、甘い味がしてこんなのもあるんだなとグラスをクルクルと回していると 「『ルシアン』っていうカクテルだよ。お味はどう?いつも飲んでるモスコ・ミュールよりも甘みがあるだろうけど、イチには丁度良いんじゃないかと思ってね。」 なんて言って、ゆっくりと席に戻ってきた。 片手に携帯電話を持っていたから、仕事の電話かなーなんて考えているとグシャグシャと頭を撫でられて止めてと思う自分と、もっと撫でてと思う自分がいて何だか気持ちが悪い。 思わず頭を振ると、フッと鼻で笑って優しく撫でてくれていた手が離れていった。 もう少しだけ… と思ったけれど、いやいやいや。と甘えそうになっている自分を立て直すことに専念して、目の前にあるルシアンというカクテルをグッと飲み干した。

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