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それが恋だと気づくまで――
※【残り火】本編のネタバレが一部ございます。
※過激な表現などございますので、苦手な方はリターンお願いします。
※読者様からリクエスト戴きました。穂高さんの義理のお兄さん、昇さんの恋の奇跡を掲載していきます。大人の階段登る、昇兄さんのお話を展開していきますので、お楽しみに。
***
「あーあ、何やってんだか。穂高が見たら、間違いなく怒りまくるだろうな」
千秋から夏休みが終わる前に島から戻って来るスケジュールを聞いていたので、彼が住んでいるアパート前で待っていた。
ベンツを路駐し、スマホをいじりながらぼんやりしていたんだけど、すぐ傍にある電柱にもたれかかった若い男に、自然と目が留まった。
短髪だからこそ整った顔立ちが露わになっていて、なかなかの色男だなぁと見惚れてしまったのだけれど、やっぱり穂高には及ばないなぁと勝手に比べてしまったのだった。
暇だったので、じっと色男の様子を窺ってみる。
そわそわして誰かを待っているのが、表情だけで分かった。もしかしてだけどもしかするなと考えて、パワーウィンドウの昇降スイッチを押した時に、タイミングよく声が聞こえてきた。
「おーい、竜馬くん」
「アキさん、お帰りなさいっ!」
「わぁっ!?」
色男は急いで駆け出し、千秋の体をぎゅっと抱きしめる。そんな行動に戸惑いつつも無防備に微笑む姿に、自然とイライラした。
穂高という恋人がいるのに、どうして抱きしめ合うことが出来るのやら。しかも色男は間違いなく、千秋に好意を抱いている様子なのに。
(流れる水は澄んだままでいられるけれど、動けずそのままでいたら腐っていくだけなんだ。俺のように、さ――)
それを教えてあげないと、きっと大変なことになる。
過去の自分を振り返りながら、ひとつに重なり合う影を見つめ続けた。
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