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ハートに火をつけて(千秋から穂高さんへ――)

「チョコが途中で割れないようにぷちぷち包装OK、手紙も入れ忘れしないようにっと」  働いてるコンビニでバレンタインフェアが始まってから、急がなきゃという感じで用意したチョコレート。お酒好きな穂高さんに合わせて、ウィスキーボンボンの詰め合わせを買ってあげたんだ。  ついでといっては何だけど、いつもお世話になってる船長さん用に、日本酒の入ったチョコも添えてみた。分かりやすいように宛名をつけて――。 「喜んでくれるといいな、穂高さん」  別れた後だった去年のバレンタイン。大好きなのに渡せなかったからこそ、今年は無駄に力が入ってしまう。 「あとは、大手通販会社から取り寄せた『ホットコット』を入れてあげてっと。意外とかさ張っちゃうな」  張り切ったせいで用意していた箱の中が、ぱんぱんになってしまった。  コンビニで販売している雑誌で、新製品を試供しまくり酷評している特集記事を見つけたので、休憩時間に購入して読んでみたら、CMで話題のあの製品の保温率がそんなに高くないことを実験結果で知り、1番あったかい商品として紹介された物を、自分用と穂高さん用に通販で買ってみたんだ。  実際に着てみると、想像以上に着心地がいい上に軽くて温かい――さすがは、ナンバーワンと称されたことはある!  寒空の下、冷たい海の上で仕事をしている穂高さんにピッタリだよね。  温かいことが実証されたので追加注文して、穂高さんの分を数枚購入。通常の商品よりもお財布に優しくて、すごく助かってしまった。 「本当はバレンタイン当日、俺があっちに行って直接あたためてあげたら、喜んでくれるんだろうけど」  2月は節分に使う豆や恵方巻き販売、そしてバレンタインと毎週イベントが目白押しで、バイトを休むことが出来ないんだ。 「チョコはいいとして、バレンタインにあったか肌着をプレゼントするのは、正直色気がないけれど、あの穂高さんでも俺が体を気遣ってることくらい分かってくれるよね」  あるいは――。 『これを脱がせたいから、送ってくれたのかい?』  なぁんて幻聴が聞こえてしまったのは、一体何でだろう? 「それを言わせないための、爆弾投入して終了!」  アクセントとして小物入れになってる、キ○ィの顔の形のガラスケースを用意してみた。小物入れ部分には予め、小さなチョコが入っている。食べ終えたら好きな物を入れてくださいねって、手紙に書いてあげた。 『君との思い出を入れるために、空けておくことにするよ』  なぁんてキザな台詞が、穂高さんの声によって脳内に聞こえてきた。他の人が言うと、うわぁとどん引きしちゃうものでも穂高さんが言うと、嫌味に聞こえないからすごいんだよな。 「というか、こういう幻聴が聞こえる時点で、俺の頭は相当穂高さんにヤられてるってことじゃないか」  そんな文句が出てしまっても、口元を緩ませながら作業ができちゃうのは、好きな人のために荷物を作ることが楽しいから。穂高さんの手元に届いた時の顔を想像するだけで、胸の中が騒いでしまう。ジタバタ暴れて、しょうがない状態といってもいい。  こんな恥ずかしい姿、誰にも見せられないや――

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