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蒼い炎10

***  次の日の夜のバイトの時間。アキさんと逢える貴重な時間に、心がウキウキしていた。ゆっきーの顔を見るまでは――。 「竜馬、お疲れー」  先に店舗に入っていた俺に、ダルそうな感じで挨拶してきた。 「お疲れ、さま……。何でゆっきーがシフトに入ってんの? アキさん病欠?」  カウンターにあるレジの前でぴきんと固まる俺に、はーっと深いため息をついて、眉根を寄せながらじっと見つめるゆっきー。 「何でって、思い当たるフシがあるでしょ。あまりにも可哀想だから、俺とシフトをチェンジしたんだよ」 「そんな……」  アキさんに逢える貴重な時間が、これでなくなってしまったじゃないか! 「いい加減に諦めなよ。ホントのところは、応援したいんだよ俺だって。千秋に好きな人がいなければの話だけどさ」  言いながら、どんっと体をぶつけて苛立ちを表す。 「だけどライバルがあのカッコよすぎるイケメンじゃあ、絶対に無理だって。千秋もぞっこんって感じでしょ?」 「うん、そうだけど」 「竜馬だって、そこそこのイケメンなんだしさ。千秋を諦めて、もっと周りを見てごらんよ。いい人がきっといるって」  分かるような分からない説得をするゆっきーに、首を縦に振ることが出来なかった。 「そんなの無理だよ。だってアキさんが好きなんだ、すっごく」 「竜馬……」 「どうやってこの気持ちを断ち切ればいいか、全然分からないんだよ。その方法を教えて、ゆっきー。辛くて堪らない……」  アキさんに逢える唯一の貴重な時間が絶たれて、このときはマイナス思考が心の中をぐるぐる支配していたけれど、あとから冷静に考えたときに思いついたんだ。アキさんのシフトの日を狙って、帰りを待ち伏せすることに――。

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