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ドキドキハラハラのハロウィンナイト⑤

 前日に自宅横にある物置に、懐中電灯と鏡・カツラ・衣装と色つきリップを隠しておいた。  なので手ぶらで、職場前まで来てしまったのだけれど――お昼ご飯や飲み物が必要だと気がつき、職場を通り過ぎてスーパーまで足を運んだ。  買い物を終えて事務所に入り、いつも使っているデスクにとりあえず腰掛けた。 (残された時間を使って、女性らしい仕草をマスターしてやる)  練習している途中に穂高さんから連絡があって、今からここに来るんじゃないかとわたわたした。だけど頑張っている最中だからという俺の言葉に、あっさりと引き下がってくれたんだ。  お陰で思う存分、練習が出来た。  最初の頃よりは、男っぽいところがなくなったんじゃないかと、自画自賛しておく。思い込みって大事だよね、うん……  今回の女装で改めて分かったのは、女装をしている人ってきっと、俺以上の見えない努力をしているんだろうなってこと。  女装を趣味にしている人が皆、そうじゃないのかもしれないけれど、やっぱり見た目だけじゃなく、中身も女の人になろうと思ったら、仕草や喋り方だってそれなりにしていないと、女装をした意味がないような気がする。  俺の場合、見た目がまんまザ・女装になっちゃうので、そこんとこをしっかりとフォローしなくちゃならないんだ。  しかも今回はイベントで初めて、自分から何かしようと思い立った。驚かせたいし何より、もっと好きになって欲しい//// って求めることに、際限がなくなってしまうな。  楽しみに待っていてね、穂高さんっ!

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