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ドキドキハラハラのハロウィンナイト⑩
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途中から落ち着いていられなかった。目をぎらつかせた穂高さんが、食事が終わった途端に襲ってくると思ったから。
洗い物をきちんと片付けないとメイドの仕事が終わらないということを口走り、食べ終わった瞬間に食器を手にして、逃げるようにその場を離れた。
お陰で襲われることなく、食器を洗うことが出来ているけれど――背後で静かにしている穂高さんのことも、若干気になるな……。
ガサガサという紙が擦れるような謎の音を聞きながら、泡まみれの食器をお湯で丁寧に流していった。
お皿があと二枚で洗い物が終わるというときに、背中に感じた軽い衝撃とぬくもり。
「千秋、待ちくたびれた」
「もうすぐ終わりますよ。ほら」
両手にお皿を持って見せたら、急かすように穂高さんの二の腕が身体に巻きついてくる。
「トリックオアトリート!」
愛おしそうに頬擦りしながら告げられた低音ボイスが、柔らかく耳に沁み込んできた。
「洗い物を頑張った千秋には、甘いお菓子をプレゼントしよう。受け取ってくれ」
まだ終わっていないというのに強引に顔を近づけてきて、くちびるを重ねる。間を置かずに滑り込んできた、丸くて甘いものは――。
「んんっ! これって、マスカット味のチョコレート!?」
「ふっ。千秋にトリックオアトリートって言われたとき用に、こっそりと準備しておいたんだ。いたずら回避のために、ね」
両想いになってから穂高さんの家に行くことが増えたときに、一緒に食べた思い出のチョコレートだったりする。当時は穂高さんがホストの仕事を始めた関係で、すっごく不安になりながら食べたけど、今は純粋に幸せを感じつつ食べることが出来るな。
「ありがとう、穂高さん。久しぶりに食べたせいか、すごく美味しいです」
お皿洗いもあと一枚。早く終わらせてあげないと――。
そう考えて手早く泡を流そうとしたら、しゅるしゅるという衣擦れの音がすぐ傍でした。
「……穂高さん、俺の仕事はまだ終わってませんよ」
「まるで、プレゼントについたリボンを解く気分だな」
言いながら、ひらひらエプロンの紐を勝手に解いていくなんて。
俺が逃げられないのをいいことに、ハアハア息を荒くして左手をスカートの中に入り込ませてきた。右手はファスナーをゆっくりと下していく。
指先が太ももの内側をつつつっと触れていくだけで、ぞくぞくが止まらない。スカートって、無防備すぎる!
「やっ、もう。こんなところで止めてください……」
ビクビク感じながらも何とか最後のお皿を洗い終えてから、震える手でお湯を止めた。
すごく感じてしまっているせいで、両足がガクガクしてしまう。シンクに掴まっている両手は濡れたままなので、穂高さんの手を阻止することが出来ない。早く拭って、この状況を何とかしなきゃ。
「あの、穂高さん……んっ、こんなところじゃ…落ち着いていられ…ないんっ、ですけど」
途切れ途切れだったけど苦情を告げたというのに、スカートに忍び込んでいる手は、太ももからお尻に移動して下着の上から、しっかりとお触りしている最中だし、反対の手は下したファスナーの隙間からワンピースの中に入り込んで、胸の頂を指先で弄んでいた。
「俺の問いかけに、千秋がお菓子をくれないからじゃないか。だから思う存分、いたずらしているだけなのだが」
「だからって、こんなところでしなくてもっ……んぁっ、やだぁ……」
俯きながら首を横に振って、いやいやをアピールしてみたけど、喉の奥で笑うような声が耳に聞こえてくるだけで、手の動きを緩める気配すらない。
「こんな格好をして洗い物をしている千秋に、手を出さない方が無理な話だよ。可愛い洋服の中で、こんなに感じて……ね、顔を見せてくれないか?」
真っ赤になっている俺の顔は、長い髪の毛のお陰で今は隠れている。俺を感じさせようと両手が塞がっている穂高さんには、この髪の毛が退けられないだろう。しかもいつも責められる耳も隠れているから、ラッキーかもしれないな。
「やれやれ……。女のコになりきった千秋は、いつもより恥ずかしがり屋になってしまうのか。それなら――」
服の中に入り込んでいた両手が素早く引き抜かれ、くるりと身体を反転させられたと思ったら。
「うわぁっ!?」
荷物のように、軽々と肩に担がれてしまった。自分のナニも大事だけど短いスカートのせいで、お尻が丸見えになっているような気がする!! 妙にスカスカしまくってる!
「おっ、降ろしてくださいよ~。恥ずかしいですって」
穂高さんの身体に縋り付きながら、片手でスカートの裾を押さえたというのに。
「大丈夫だ。俺以外、誰も千秋のパンツを見たりしないから」
そう言って押さえているそばから、わざわざスカートをめくり上げてきた。
お願いだから誰か、穂高さんのセクハラを止めてください(熱望)
じたばた暴れる俺をものともせずに寝室まで歩いて、優しくベッドに下ろす。
ファスナーが下ろされていたから、エプロンと一緒にワンピースが肩から外れて、腕で引っかかっている状態になっていた。そんな俺に跨って、意味深に微笑みながら両腕を突き立てる。
「君に選ばせてあげよう。女のコとして優しく抱いてほしいか。それともその洋服を引き裂くくらい、激しく愛してほしいか」
「そんなの、聞くまでもないのに」
被っていたカツラを両手で外して、ベッドの外にぽいした。
「だって俺は男なんだ。好きな人にはとことん、感じてもらいたいと思うからこそ――」
片方の腕をワンピースから抜いて胸をチラリさせながら、スカートから出ている足を大股開きをして、誘うように腰をしなやかに前後してみる。色気のある仕草から学んだものだけど、感じてくれたかな。
「……穂高さんには、激しく抱いてほしいって思うんだよ」
「ふっ、そんな腰の動きじゃ、俺を感じさせるのは無理かもしれないよ。もっともっと激しくしなければ、ね」
近づいてきたくちびるが、求めるように俺に重ねられる。
「んぁっ…ほらか、さ…んっ」
「忘れられないようなハロウィンにしてあげる。甘くて激しい夜に――千秋、愛してる」
慣れた手つきでワンピースを上手に脱がす穂高さんに、相当遊んでいたんだなぁと内心ひどく焦れてしまったからこそ、俺の反撃ではじめて先にイかせることに成功したのでした。
めでたし めでたし
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