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ふたりきりのクリスマスナイト☆⑨
「はい?」
ハロウィンのときは、自前のボクサーブリーフを履いていた。女性物の下着を手に入れるなんていう、そんなレベルの高いことが絶対にできなかったし。
「女性物の下着と一緒に、ニーハイソックスがもう少し太ももの上まできて、それにガーターベルトをつけたら千秋の細長い足が、間違いなく色っぽく見えるなと思ったんだ」
見た目の可愛らしさだけじゃなく、見えないところに大人の色気を求めているんですね穂高さん……。女装ビギナーの俺に、そんなものを求めるとは――。
「そういう細かいところまで配慮ができなくて、すみませんでした」
ぽろっと謝罪を口にしたら、天井を向いていた顔を俯かせ、俺の顔を見下ろしてくる。どこかデレッとした面持ちがその表情から分かってしまい、ちょっとだけ引いてしまったのは内緒だ。
「謝ることはない。あれはあれでドキドキしたし」
「でも妄想してそれを使ってしまうくらい、俺のその姿が見たかったんですよね?」
他の人じゃなくて何よりだけども――複雑な心境は変わらない。
「否定はしない。でも、もういいんだ」
「どうし……ぅわあっ!?」
驚く間に、横抱きにされてしまった身体。抵抗すべく、じたばた暴れる前に寝室まで移動し、ベッドに横たえさせられてしまった。
「千秋の知りたかったことは、ちゃんと喋った。次は君がきちんと寝る番だ。はい、パジャマを着てさっさと寝ること!!」
押し付けるようにパジャマを手渡し、逃げるように寝室から出て素早く扉を閉める。
(穂高さんの自慰ネタについては聞き出せたけど、他にも何か誤魔化しているような気がするのは、俺の勘違いなのかな?)
穂高さんの強引な力技の前にいつものごとく、俺はなす術がなかったのだった。
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