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ふたりきりのクリスマスナイト☆⑪
※どうにも短編にならなかったので【残り火 After Stage ―未来への灯火―】を別枠にて連載しております。穂高の初恋のヒミツやそこかしこで行われるイチャイチャなどなど、本編その後のふたりをお楽しみくださいね。
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夕方、完成したシチューの入った大鍋を持参して、穂高さんとふたりで葵さんのお宅にお邪魔すると、康弘くんが大喜びして俺に抱きついてきた。
大鍋を手にしている穂高さんが、ちょっとだけ眉根を寄せて俺たちを見下ろしていたのは、見なかったことにしておく。
「こんばんは。康弘が無理なお願いをしてゴメンなさいね。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ。ふたりきりでイブをするよりも、大勢で楽しんだほうが想い出になりますし」
そんな挨拶を交わして居間に招かれると、部屋の隅っこに小さなクリスマスツリーが飾られていて、電飾がぴかぴか瞬いていた。
(うーん。穂高さんのクリスマスプレゼントに頭を悩ませていたせいで、ツリーの存在をすっかり忘れていた)
クリスマスだというのに、いつもと変わらない自宅の様子に落胆していると、葵さん宅の台所から戻った穂高さんに、袖を引っ張られる。
「そんな顔をしていると、ヤスヒロが心配すると思うのだが。大丈夫かい?」
疲れさせてしまっただろうかとコソッと耳元で告げるなり、小さな吐息をかけてきた。こういうスキンシップをいちいちしてくるから、困ってしまうんだ。
「……穂高さんが一応、配慮しながらシてくれたので大丈夫です。体力はまだ余っていますから」
「それは良かった。帰ってからが、本番のクリスマスパーティだからね」
それって、何をする気なんだろうか。プレゼント交換して、一緒にお酒を呑んだりすることかな?
「千秋さんが作ってくれたホワイトシチュー、すごく美味しそうですよ。康弘、運んでちょうだい」
「俺たちも配膳のお手伝いしなきゃ。行こう穂高さん」
「ん……。ヤスヒロを楽しませなければね」
こうして四人そろってワイワイしながら、クリスマスパーティが終わっていったのだった。
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