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―純血の絆―②その8

 手にしたアンプルを目の前に掲げながら、音もなく差し出したお父さん。それが天井から吊るされているシャンデリアの光を受けて、キラッと光り輝いた。 「これを使うかどうかは、千秋が決めてください。穂高の運命を、貴方の選択にゆだねます」  穂高さんによく似た低い声。それはとても静かに告げられたものだったのに、鼓膜に響くように聞こえてきた。 「それを使いたいです。人として短い人生を送るよりも彼と長く一緒にいられるのなら、半妖として生きます!」  選択に迷いはまったくなかった。  お父さんが穂高さんを長らえたいという想いが一致したのもあるけれど、一分一秒でもいいから愛する彼の傍にいたいという強い気持ちが、迷いを一瞬で消し去った。 「千秋がこれを飲めば、半妖になることができます。ただし口に含めば、二度と人間には戻れません、それでもいいですか?」  ふたたび俺に問いかけてきたお父さんに歩み寄り、右手を差し出した。 「穂高さんを愛しているから、迷うことはないです」 「ありがとう、千秋」  寂しげな笑みを浮かべたお父さんは視線を落とし、親指でアンプルの上部をへし折って、中身が飲めるようにしてくれた。それを受け取って、躊躇うことなく一気に飲み干す。  口の中に血の味を感じた瞬間に、喉が焼けつくような嫌な感覚にとらわれた。 「くっ! ううぅっ……」  持っていたアンプルを放り投げて、首元を押さえながらその場にうずくまった。襲いかかってくる目眩や妙な浮遊感に気持ち悪くなり、息を大きく吐き出しながら意識を手放した。  穂高さんの純血が俺を半妖に変えるそのとき、扉の開く音が耳に聞こえてきたのだった。

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