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接触
「あの…」
悠に三たび声をかけられ、春翔はようやく返事をする。
「あ、すいません。今日からバイトの坂崎春翔です。よろしく」
「よろしく、俺は咲田悠、サキタって発音しにくいとかで、ユウって呼ばれてる。他のメンバーも帰って来るよ」
悠が手にしたシャツを着ながらにっこりと笑顔で答えた。
ホテルの仕事は夕食前後と朝食前後に集中しており、午前10時くらいから夕方16時くらいまでが中抜けの休憩時間となる。
今は午前10時過ぎ、他のメンバーが帰って来た。
「新しいバイト君」
「坂崎春翔です」
悠の声かけで、春翔は改めて自己紹介する。
「中村拓真 K大1年。拓 って呼んでください」
茶髪で軽そうな男が一番に挨拶してきた。
「泉大輔 N大2年です」
春翔も180あるが、185超えていそうな体格の男が続ける。
「俺は高田隆司 、んでこっちが井口和史 、こっちは滝井佳久 」
高田と名乗る男が自分の周囲もまとめて言った。見た目で人を決めつけてはいけないが、多少の判断材料にはなる。茶髪ではなくほぼ金髪にピアス、春翔のセンスに無いシャツの柄、日常なら仲良くなるタイプではない。
「あんたも大学生?なんか頭いい人ばっかで俺らちょっと肩身狭いんだけど。こちとらフリーター組だかんね。悠さんなんかT大ってなんだそれって感じ」
高田の言葉を聞いて春翔は再び悠を見た。
「えっ?T大?俺も、俺もT大、経済の3年」
悠も驚く。
「へー偶然、俺は薬学部の5年」
「5年?えっ年上!?マジ?」
春翔は更に驚いた。高校生と言われても信じる。
驚いてる春翔に続けて拓が言う。
「確かに悠さんは年上に見えないよなぁ。泉さんの方がよっぽどおっさん」
拓に自分の名前を出された泉は負けじと言い返す。
「うっせーよ。悠さんと比べりゃ誰でもおっさん顔だよ」
春翔は悠に話しかける。
「薬学だから5年?」
「うん、6年制だから」
「坂崎さんも3年なんすね。苗字の4文字長から、はるとさんでいいっすか?」
何かと言葉を挟む拓が仕切る。
「ああ、うん、何でもいい」
合コンとかで率先して司会進行するタイプだなと、春翔は拓の社交性に感心しつつ、挨拶を終える。
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